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知らなかった
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しおりを挟むチュンチュン…
鳥の鳴き声が聞こえる。
「…ん…」
怠い瞼を持ち上げた。
…見慣れた自分の部屋の天井。
ぼうっとした頭で徐々に思い出す。
…そうだ俺、唯人と…
突発的だったとはいえ、凄いことをしてしまった。
頬が熱い。
そんなむず痒い感覚に身体を動かそうとした瞬間腰に激痛が走る。
「…っ、!痛ってぇえ!」
痛いこれはやばいぐおおおと悶絶した。
「なぁ唯人、腰やばいんだけど…」
泣き言を漏らしながら隣に手を伸ばす。
笑いながら冗談っぽく言って、でもすぐに何も触れないことに気づいた。
…あるのは、冷たいシーツの感触だけ。
ひやりとする心臓にゆっくりと視線を動かす。
わかってる。わかってるけど
…もしかしたら
そんな淡い希望を抱きながら
昨日唯人がいた場所に目を向ける。
「…っ」
…いない。
唯人が、いない。
昨日あんなに熱くなって、お互いを求めて、…そんな彼の香りが残ったベッドで今は一人。
「…唯人…」
呟いた声が震える。
「…ゆいと…っ、ゆいとっ…ふ…ぁああ…っ」
堪えられずに目頭が熱くなって涙が零れる。
何度も名を呼んでシーツを握りしめて泣いた。
…そうだ。唯人がいるわけない。
だって今日結婚するんだから。
…今頃彼はその女と一緒にいるんだろう。
俺が女なら良かったのに。
そうしたら男同士とか考えなくて良くて、もっと素直になれてたかもしれない。
今、彼と一緒にいられたのは俺だったのかもしれない。
唯人が結婚するって話を聞いた時、本気で死ぬと思った。
比喩とかじゃなくてリアルに心臓が止まるかと思った。
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