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翻弄
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しおりを挟む俺を見下ろす野良の姿が、あの日と重なる。
「…………好き、だ…」
ゾクリと震えた。
零した言葉に、瞼の裏が熱くなる。
一度溢れた感情をとめることはできない。
だめだとわかっていても、思い出せば出すほど、止まらなくなってしまう。
「…俺、…野良が…好き…なんだ…」
「………」
「のら、…」
泣きそうになりながら手を伸ばそうとすれば
相手の瞳に苛立ちが滲んだのを見て、びくりと震える。
「ご、ごめん、ごめ、」震えながら謝り、俯いた。
血の気が引くほど身が竦む。
わけもわからずに謝らなければと頭を埋め尽くす思考に、懸命に冷たい唇を開こうとしていれば、……髪に何かが触れた。
優しく、少し不器用に頭を撫でられた。
顔を上げると、困ったように、持て余した表情で僅かに目を細める。
「僕は、もう佐藤の”御主人様”じゃないんだよ」
「…っ、」
聞き覚えのある単語に、びく、と変に身体が震えた。
脳裏をよぎる過去の出来事に、喉が塞ぐ。
「強制されていたあの頃とは違う」
「…おれ、おれだって、…わかって、」
……いつまで『そう』しているのか、と咎められた気がした。
別に俺はあの時の真似事で好きだと言ったわけじゃない。
あれがあったから、こんなことをしているわけじゃないのに。
「わかってるなら、”それ”つけてしてないだろ」
心底嫌な物を見る冷めた視線が、俺の首元に向けられる。
数年前のあの日に使っていた物だから、古くなっていて既にぼろぼろで汚い。
「佐藤がどう思ってるかは知らないけど、僕は二度と同じことを繰り返したくない」と、ため息まじりの声が零される。
「あと、何度も言ってるけど『成瀬』だから」
「………ごめん」
野良は、あの後苗字が変わった。
両親が離婚したのもあるし、…野良自身、全部なかったことにしたいんだろうと思う。
……俺の望みとは、反対に。
頭の奥まで冷え切った感覚で、下を向く。
首輪から垂れている鎖と、ジッパーを外して半分脱げている乱れたズボン。
萎えた性器、先程吐き出した白い精液が太腿を、足を、手を濡らしている光景。
違うのは、
この場におじさんがいないってことと、
……野良にさせられたわけじゃなく、俺自身が望んで『一人で勝手に』していたってことだ。
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