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普通の病院
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……………
「そっか。全部忘れちゃったんだねぇ」
病衣を着た少女……堀口 寧音(ほりぐち ねね)の言葉に、「…うん」と頷いて曖昧に笑う。
簡潔な言葉にされると、自分の現在の状況を嫌でも実感する。
「記憶ゼロになるぐらい酷い事故に遭って、それなのに家族が1回も面会に来ないって相当仲悪かったんだ」
「う、…そう、かも…」
結構気にしていたことが彼女の隣から飛んできて、グサ、と胸に刺さった。
「はは、ごめんごめん」と悪気なく、屈託なく笑う少年…佐川 湊人(さがわ みなと)のその台詞とは関係ない理由で、ついと視線を下げる。
……左目を隠すように、顔の左斜め上を覆っている真っ白な包帯は何度見ても慣れない。
あまり見てはいけないと思いながらも、目を向ける場所に困ってしまう。
こういう態度自体失礼かもしれない、どうしようと優柔不断な仕草になってしまっているだろう自分に反省して、自然に振る舞おうと意識する。
今日初めてこうして話す相手に対して、二人とも人懐っこいらしく躊躇なくベッドに座り、会話をしていた。
初対面なのだから敬語を使った方が良いんじゃないかと思っていたけど、断固として首を横に振られた。あと、呼び捨て絶対!と押し切られてしまった。
寧音と湊人は昔からの付き合いとかそういう関係ではなく、入院してから知り合ったらしい。
色々オレの知らないことも教えてくれた。
ここの食事のおすすめメニューとか、毎週同じような食事が出るとか、よくある当たり障りのない話もしていた。
…それで入院の経緯についての話になり、記憶がないことに触れないわけにもいかず、全てを話した。
緊張しているのか、何故か喉が渇いてしまう。
無駄にお茶を入れたコップを手に取り、意味もなく飲んでいた。
「君、俺の弟に雰囲気似てるから、つい揶揄っちゃうんだよね」
「おとうと?」
「そーそー、双子の弟がいるんだって」
「双子ってすごくない?しかも二卵性!」と興奮した寧音に腕を痛くない程度に掴まれる。
軽くゆさゆさと揺らされ、「う、うん、凄い」と同意しつつも、ちょっとその振動で酔った。
「どこが似てるの?」
「んー、そうだなぁ」
好奇心からかわくわくと疑問を投げかける寧音に、探るように湊人がじぃっとオレを見据える。
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