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彼女
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しおりを挟む急いで来たのだろうか。
息遣いが荒く、心臓の音が異常な速度で脈を打っている。
「ずっと、心配してたんだよ…っ、!あの後、怪我したって聞いて、」
「…『あの後』?」
長い髪から香水のような匂いがする。
彼女の言葉の意味がわからず、繰り返すと、「…う、うん」と気まずげに逸らされた。
「確かに私も悪かったけど、でも、あれは真白くんの勘違いで、」
「麻由里」
「…!」
無感情なような、けど、単調には聞こえない声。
病室の入口の横。
壁に背を預けていた『彼』が短く言葉を呟き、対して大げさなほどに反応をした彼女に、それが彼女のことを示しているのだと気づいた。
「だめだろ?本当のことを教えてあげないと」
「な、なんで、ひびきがここに…っ、」
彼を見て呟かれた名前に、目を軽く瞬く。
数日一緒にいたのに、今初めて知った。
彼は『ひびき』という名前らしい。どういう漢字なのだろうと、少し気になる。
同時に、
病室の影になって見えづらい位置にいたその人物を初めて捉えて、オレから急いで離れてカッと頬を染める彼女。
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