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雪華(せつか)
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しおりを挟む(たしか、一日かけてやっと見終わるぐらい、たくさんの種類の魚がおっきくて透明なガラス…すいそう?の中にいて、ぺんぎんとか、しろくまも、イルカも見れるって言ってたところ…だよな)
でも、その時は外は危険がいっぱいだからだめだと言われたから、提案自体が意外だった。
写真や絵で見た時から、すっごく気になってたし、特にしろくまと、イルカは特に気になっていた。
勿論、実際にこの目で見れるなら、ぜひ見てみたい。
「忘れてると思ってた」
心のままに言えば、彼は伏目がちに何故か哀傷を滲ませた表情を浮かべる。
「外に出ても良いのか?」
「……はい。先日貴方を泣かせて、辛い思いをさせてしまったお詫びもさせていただきたいのですが、…いかがでしょうか」
先日というと、……おそらく、あの日だろう。
さっくんの過去の話を聞いて、ほっとけーきを作って火傷して怒られて、…今振り返ると恥ずかしいぐらい、子どもみたいに泣いた日。
「もし既に興味を失くされていたら、別の事でも」
「ぁ、ち、違う!さっくんのじゃなくて、オレの行きたい場所でいいのかなって思ったから、」
考え込むオレに心配になったのか訂正しようとするさっくんに、慌てて弁解する。
(…だって、それだとさっくんじゃなくて、オレのお願いごとを叶えるだけじゃないか)
プレゼントをあげたかったのに、オレがもらってしまうような形になっていいのだろうかと悩んでしまう。
「はい。貴方の望みが、俺の望みですから」
「……んー、…うん、わかった。さっくんがそれでいいなら」
当然のように返される台詞に、…少し考えて、…結局こくんとうなずく。
「それと、お一人では危ないのでケーキは一緒に作りましょうね」
「あ、やっぱりそうなるか。ひとりでうまく作ってびっくりさせたかったんだけど、」
「数日前クリームまみれで酷い惨状になっていたことをもうお忘れですか?」
「……む、」
それを言及されると一切の反論はできないけど、でも、それもこれも全部身の回りを何もかもさっくんがやってくれてるからで、別に自分でやろうとすればすぐに全部できるようになるのに、
と、さっくんに言い返して勝てたことがない…むしろ碌なことにならないからと、言葉には出さずにむくれていると、「……?ぅお、」抱き上げられて、椅子にそっと丁寧におろされる。
「以前から何度も申し上げておりますが、夏空様は他の人より御身体が弱いのですから、どのような些細なことでも俺が傍にいるとき以外にしようとは思わないでくださいね」
「…わかってる。前にもそれが普通だって教えてもらったけど、けど、ほんとに、このまま世話してもらってていいのかなって、時々思っちゃって、」
「……それの、何が悪いのですか?」
不意に、美しい琥珀色の目が、暗く温度を下げる。
一見優しい笑みを浮かべているのに、威圧感を感じるほどひやりとするその表情に、息を呑む。
「……ぇ、」
「自分で何もできないことの、何が悪いのですか?」
「…だ、だって、多分、…わかんないけど、このままだと、だめな気がして、…一人で全然何もできないから、」
オレが疑問に思う感情が理解できないと、彼は僅かに首を傾げた。
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