284 / 297
雪華(せつか)
2
しおりを挟む熱くてけだるい身体が地味に痛くて、うぐうぐ泣きじゃくっていると、そっと額に触れる冷たい手。
すごく優しくて、ほっとする。
「ずっとお傍にいますからね。……あまりお身体を動かすのも良くないので、そろそろベッドで寝ましょうか」
「…っ、子ども扱い、するな」
心配そうに微笑むさっくんに、むぅとむくれる。
けど、本心じゃない。
…子ども扱いするなというわりには、今だってオレから首に回した腕でぎゅううって抱きつく。
その意図を理解して、すぐ傍で笑みを零す気配。
身体を抱え上げて、寝室に運んでもらう。
行動と言ってることがあべこべだ。
「…様、…夏空様?」
「…んぅ…?」
「ベッドにつきましたよ」
「………うむ、」
気づかなかった。
ちょっと眠たすぎて意識をなくしかけてたけど、まだこのぎゅってしてるのをやめたくなくて、離れなかった。
でも熱をだすたびに、このまま自分が弱っていつか死んじゃうんじゃないかって怖くて、…今日じゃなくてもいつか死んじゃうんじゃないかって怖くてたまらなくなることがある。
いつもこうだ。楽しいことや嬉しいことをたくさんしたいと思ったら、すぐに熱を出す。
まるで、そうすることを許されないみたいに。
さっくんと外に出てもすぐばてるし、雨に濡れても風邪をひく。
「こっち、」
「…っ、」
やわらかい布団の上に膝をつけて、手を離して諦めたと見せかけて、別の場所に腕を伸ばす。
さっくんの背中に回した腕で、身体の重心ごと傾けておもいきり自分の方に引っ張ってベッドに倒した。
「いっしょ、……いっしょに、ねる」
「……嗚呼もう、無理にこうしなくても一緒に寝るのに、」
「ん」
いつもより子ども返りしているのは認める。
それでも、すりすりしてあまえたい。
布団の中でぎゅってして、それらを甘んじて受け入れてくれながら頭を撫でてくれる。
「…オレだって、普通にいっぱい遊びたい…」
「………申し訳ありません」
ぼそっと熱い吐息を零しながら呟いた言葉に対して、自分の落ち度であるかのように悲しそうに謝られる。
「さっくんのせいじゃないだろ」
「……」
俯き、視線を逸らす彼の様子に、小さく首を傾げる。
暗い表情をするさっくんに、まったく、と息を吐く。
どうして自分のせいみたいな顔をするんだと、ぎゅっとその手を握った。
「オレはさっくんが傍にいてくれるなら、それでいい」
「…っ、夏空様は、いつも俺を喜ばせるのがお上手でいらっしゃいますね…」
心から嬉しそうに、零れるような笑みを浮かべるさっくんが、オレの手を握り返してくれる。
大事なものに触れるように、壊れものを扱うように、優しく。
「貴方のおかげで、今も生きていられます」
「…ぬ、わ…っ、だ、…だからいつも大げさなんだって、」
すくいあげるように軽く持ち上げたオレの手の甲に。その薄く整った唇を軽く触れさせ、泣きそうな面持ちをする。
綺麗な顔で囁かれる台詞に、…お姫様が王子様に跪いてされるようなこのシチュエーション、はたまた発熱のせいか、心臓がドキドキぎゅんぎゅんするのを感じながら、ふん、とわざと素っ気なくすると、また嬉しそうに彼は笑った。
22
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説


【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。



王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる