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雪華(せつか)
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しおりを挟む熱くてけだるい身体が地味に痛くて、うぐうぐ泣きじゃくっていると、そっと額に触れる冷たい手。
すごく優しくて、ほっとする。
「ずっとお傍にいますからね。……あまりお身体を動かすのも良くないので、そろそろベッドで寝ましょうか」
「…っ、子ども扱い、するな」
心配そうに微笑むさっくんに、むぅとむくれる。
けど、本心じゃない。
…子ども扱いするなというわりには、今だってオレから首に回した腕でぎゅううって抱きつく。
その意図を理解して、すぐ傍で笑みを零す気配。
身体を抱え上げて、寝室に運んでもらう。
行動と言ってることがあべこべだ。
「…様、…夏空様?」
「…んぅ…?」
「ベッドにつきましたよ」
「………うむ、」
気づかなかった。
ちょっと眠たすぎて意識をなくしかけてたけど、まだこのぎゅってしてるのをやめたくなくて、離れなかった。
でも熱をだすたびに、このまま自分が弱っていつか死んじゃうんじゃないかって怖くて、…今日じゃなくてもいつか死んじゃうんじゃないかって怖くてたまらなくなることがある。
いつもこうだ。楽しいことや嬉しいことをたくさんしたいと思ったら、すぐに熱を出す。
まるで、そうすることを許されないみたいに。
さっくんと外に出てもすぐばてるし、雨に濡れても風邪をひく。
「こっち、」
「…っ、」
やわらかい布団の上に膝をつけて、手を離して諦めたと見せかけて、別の場所に腕を伸ばす。
さっくんの背中に回した腕で、身体の重心ごと傾けておもいきり自分の方に引っ張ってベッドに倒した。
「いっしょ、……いっしょに、ねる」
「……嗚呼もう、無理にこうしなくても一緒に寝るのに、」
「ん」
いつもより子ども返りしているのは認める。
それでも、すりすりしてあまえたい。
布団の中でぎゅってして、それらを甘んじて受け入れてくれながら頭を撫でてくれる。
「…オレだって、普通にいっぱい遊びたい…」
「………申し訳ありません」
ぼそっと熱い吐息を零しながら呟いた言葉に対して、自分の落ち度であるかのように悲しそうに謝られる。
「さっくんのせいじゃないだろ」
「……」
俯き、視線を逸らす彼の様子に、小さく首を傾げる。
暗い表情をするさっくんに、まったく、と息を吐く。
どうして自分のせいみたいな顔をするんだと、ぎゅっとその手を握った。
「オレはさっくんが傍にいてくれるなら、それでいい」
「…っ、夏空様は、いつも俺を喜ばせるのがお上手でいらっしゃいますね…」
心から嬉しそうに、零れるような笑みを浮かべるさっくんが、オレの手を握り返してくれる。
大事なものに触れるように、壊れものを扱うように、優しく。
「貴方のおかげで、今も生きていられます」
「…ぬ、わ…っ、だ、…だからいつも大げさなんだって、」
すくいあげるように軽く持ち上げたオレの手の甲に。その薄く整った唇を軽く触れさせ、泣きそうな面持ちをする。
綺麗な顔で囁かれる台詞に、…お姫様が王子様に跪いてされるようなこのシチュエーション、はたまた発熱のせいか、心臓がドキドキぎゅんぎゅんするのを感じながら、ふん、とわざと素っ気なくすると、また嬉しそうに彼は笑った。
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