278 / 293
ほっとけーき
8
しおりを挟む(…………ぁ、)
今オレを見つめる彼の表情は、
……唇と舌に残る感触はひどく優しくて、あまやかで、……その言葉を否定できるどころか、……大事に思ってくれてるってことが伝わるには充分すぎるぐらいだった。
「――――――…っ、ぅ、え…」
くしゃ、と顔をゆがませて涙を零した。
ふるふる、と首を横に振る。
「…お、…っ、…オレ、ぇ、のこと、嫌、だから、…で、出て行くんじゃない、の…?」
「どうしてそうなるんですか」
困って、持て余したような微笑みを零し、「出ていきませんよ」と否定してくれる。
「…っ、ほんど…っ、?!…っ、絶対、……っ、絶対だな?!」
「はい」
自分でも子どもすぎると思うぐらい、安堵で声を上げて泣きながら抱きつく。
髪を撫でてくれる手が優しくて、また涙が出てきてしまう。
(……夢じゃない……、さっくんはここにいる。オレを、おいていかない…)
……………絶対に、おいていかない………?
「…っ、んぐ、…ひ、…っ、ぁ、…あー」
ちょっと離れて、涙を零しながら両手を広げて、口を開ける。
「……夏空様?」
「前、こう、すれば、も、も、ぅ、いっかい、するって、言ってた、から」
あれだけしたのに、まだ不安で落ち着かない。
いつもさっくんが寂しかったり、構ってほしいときにすることが多かったのに、珍しく今は自分からせがんだから、これでいいのかわからない。
「――…っ、さ、っく…」
一瞬不意を突かれた表情をしたさっくんが、口元を緩めた。
何故か少し痛みを滲ませた、華が咲くような甘い笑み。
頬を包むように触れた手。
(……ぁ、)
今度は、本気でオレが食べられちゃうんじゃないかと思うような口づけだった。
せがんだのは自分なのに、繰り返される浅い呼吸と眩暈がするほど巧みな舌使いに眩暈を覚える。
絶頂が続いているような熱に浮かされた思考で、体力も限界なのに意識が途切れるまでこうしていたい気がして、もう充分すぎるぐらいしてるはずなのに夢中になって安心感をねだる。
(……下も、触ってほしい、…)
きゅう、ってお腹の奥が痺れて耳がジンジンする。
ズボンを押し上げるほどがちがちに硬くなってるちんちんに、息が更に乱れる。
「っ、ふぁ、ん…っ、ん゛ぅ…っ、」
堪らずに尻をゆすゆす揺すって、悶える。
合間の息継ぎで、熱い吐息が触れるほど近い距離。
さすがにオレの動きに気づいたらしいさっくんが眉尻を下げる。
けど、わかってるはずなのに、何かを言われることも、されることもない。
その代わりに、口の中が極上の甘さと気持ち良さで溶けちゃうんじゃないかと思うぐらいキスをして、離れた時には既に脳の芯から蕩けきっていた。腰が砕けて起き上がることすら難しくなっていた。
「やはり、…とても綺麗ですね。夏空様は」
「………?」
「そんなに綺麗でいられると、簡単に都合よく騙されそうで心配になります」
オレの目から零れて肌を伝う涙を指先で拭い、彼は綻ぶような笑みを零す。
「こういうことをした後に、他の人と会ってはだめですよ」
「……な、んれ…?」
「お外では無表情に冷たい御顔で装っていらっしゃるのにも関わらず碌でもない人間が寄ってくるのに、今の夏空様が視界に入りでもしたら猶更危ないですからね」
「ぅ゛、…っ、ぇ、ご…っ、ごめ…っ、…っ、」
わかんないけどまたなんか悪いことをして怒られてる気がして、言葉を理解する前に謝る。
そんなこと今は言わないでくれと涙を散らして首を横に振った。
キスで忘れかけていたところに思い出して、力がうまく入らず震える手でさっくんの裾を掴む。
33
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる