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猫と少年のお遊戯
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しおりを挟む……この家には二人しかいないんだから当然なんだけど、誰かは考えなくてもすぐにわかった。
「寂しいです、夏空様」
「……まだたった数分しかたってないぞ」
いつものことだが、ちょっと離れただけですぐこの状態にされる。
数分傍にいないだけで、「俺にも構ってください」と小さい男の子みたいに、縋るように、懇願するように抱きしめられる。
今回もそうだ。
さっくんが紙で魔法みたいに出してくれた白にゃんこをもふもふしたくて、離れたのはたったの4-5分程度。
攻防戦の最中に、我慢できなくなったらしい。
すぐ傍にいるのに。
すぐ傍でみていたはずなのに。
どれだけさみしがりなんだ。
これでは一生ひとりで何もできないではないか。
「その数分が俺には耐えられません。天使の夏空様がそこの猫と可愛らしくお戯れをなされている間、どうにかなってしまいそうでした。身が裂かれそうなほどの胸の痛みと永遠に続くかと思うような真っ黒な空虚感で」
「あーあー、わかった、わかったから、」
闇落ちしかけている雰囲気の声を、遮る。
ぎゅうぎゅうしてくる腕の力をなんとか緩ませ、後ろを振り返った。
「いつもいつも、さっくんは大げさすぎる」
「……っ、夏空様、夏空様、」
今度は、オレの方からぎゅってしてやった。
しかたないなと、手をのばして頭をなでなですれば、このうえなく嬉しそうに、泣きそうにぎゅう返しをされる。
……べつにオレはいいんだけど、ちょっと離れただけで毎回これでは生活にししょーがでる。
「さっくんも、もうちょっと大人にならないとだめだぞ。家族だからって、四六時中こうしてるわけにはいかないだろ?」
さっくんのためにも良くない気がする。
ただでさえ移動は全部さっくんに抱き上げてもらってて、座るときも膝の上が多いし、それ以上となるとお互いにがんじがらめ?だ。
オレよりも年上で背も高いのに、…なんていうか、凄く時々だけど、弟みたいに感じるときがある。
「……そう、ですね」
「…ん?う、うむ。そうだぞ」
想定外だった。
……了承?されてしまった。
それに、抱きしめられていた腕の力もあっけないほど簡単に緩み、身体が離れる。
「夏空様の仰る通りです。これから気をつけますね」
「……っ、う、」
少し陰りのある微笑みに、こっちが動揺してしまう。
さっくんのことだから、もっと…なんていうか、駄々をこねるか、やだって言うと思ってた。
……嫌だって言わないのか。
(……むー…)
言い出しっぺのくせに、その対応に結構寂しいと思ってしまうのはなんでだ。
なんだか、さっくんの顔を見ていられない。
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