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彼と私の秘密(桃井side)
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しおりを挟む「ひどいよ、咲人……」
顔を覆って泣くふりをしても、慰める言葉のひとつもかけてくれない。
「私、咲人に全部捧げたんだよ…?」
処女膜再生の手術まで受けて、処女で純情なふりをして彼に抱かれた。
それに、音海には絶対にできないだろう、咲人の望む『後片付け』までしたのに。
…わかってた。
あの夜には、全部わかってた。
(どうせ、”この作業”も音海のためなんだって、)
どこかでわかっていながら、死体の処理をしてた。
けど、それでも、2人だけで誰にも打ち明けてはいけない罪の共有を抱えてることができたから。
……これから、これからもっと深い関係になっていくはずだったのに、
あの日から、それほど日数は経ってないのに、
(……もう、私を捨てる気……?)
手足から血液が消える感覚と、ふつふつと煮えたぎる汚辱。
また、
「…………音海のせいで」
音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで音海のせいで
音海の せいで、
「…あは、」零れた感情に、笑ってしまう。
わらっちゃう。
こんなの、嗤わないでいられるわけない。
学校では、咲人が私を心の底から愛してるってことを思い知らせるためにあれほど目立つ行動を皆の前で沢山させて、咲人が教師をクビになれば一生私のものになったはずだった。
私の家で引き取って、愛して愛して愛して愛して愛し尽くしてもらう計画だったのに。
その些細な夢すら、音海のせいで潰えてしまって。
それがだめな時のために、保険もかけて二人で秘密の行為をした。
それなのに、
すべて、すべてが音海によってめちゃくちゃにされた。
すべてが、音海のせいで、
……私には、何も残らないのに。それどころか、失ってばかりなのに。
「ずるくない…?そんなの、」
熱い涙が零れ落ちる。
今度は、演技じゃなかった。
じゃあ、何のために私は罪を犯したの?
あいつが、音海が咲人のために何をしたっていうの?
どうしてあいつばっかり、特別扱いされるの?
どうして私じゃダメなの?
(………音海と私で何が違うの?)
そうだよ。
だって、音海にはできないことが私にはできる、できたのにー―、
下を向き、唇を噛んで涙を流す。
それでも、と追いかけて、彼の身体に腕を回して全身で抱きついた。
既に私に背を向けていた咲人に、これでもかと食い下がる。
「私を捨てるなら、もういい」と、人目を気にせず、むしろ注目が集まるように声を張り上げた。
みっともないって自覚してる。
でも、それだけ必死だった。
「その代わりに、咲人の精子が欲しい」
「……っ、」
私の言葉に、さすがに想像していなかったのか密着した身体越しに僅かに動揺を感じとれた。
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