251 / 294
彼と私の秘密(桃井ver)
8
しおりを挟むこんな場所で、誰かに聞かれでもしていたら、
いそいで辺りを見回す。
通り過ぎる数人がちらちらこっちに視線を向けてはいても、足をとめるまでの目立った注目がないことに心底安堵した。
(……――っ、”あのこと”がばれたら、私は終わる)
私のこれからの人生も、未来の夢も、希望も、全部なくなる。
失ってしまう。
「させたのは咲人で、私は悪くないのに…っ、!!」
『宮永 涼』
血まみれの彼を、私が処理した。
原型をかろうじで留めているだけの惨状。
ぐったりとしてずっしり重い、生暖かい感触から冷たくなっていく肉体の処分も、
血が滴り、水で洗っても洗っても皮や臓器の一部か、何か考えたくないモノがこびりついて取れない包丁も、
血しぶきが飛び、水たまりみたいに真っ赤に濡れた床も、
……――――――全部、”私”が
「俺の為なら何でもすると言ったのは貴女です」
「…っ、言った、けど…」
理想以上に優しく、大切な女の子みたいに扱ってくれる彼に、促される通りに夢心地のまま頷いたのは事実だ。
愛してほしい。もっともっと、この人に私だけを見てほしい。そう思って、ただ、その気持ちだけで。
でも、そんなの、何よりも手に入れたい、愛されたい人にされたら従っちゃうでしょ…?
死体を埋めた場所も、使った凶器もすべて咲人に言われるままにしたから、私がしたという全ての証拠を握られているも同然だった。
きっと指示した咲人だって、共犯になるはず。
実際、咲人が指示したことをそのまましただけなんだから。
でも、証拠がないって言われたら?
実行は何もかも私がしたから、彼は一切凶器にも遺体にも触れてない。
あの時はおかしいくらいに気分が高揚していて何も考えられなかった。
咲人が傍にいてくれるなら何でもできると思った。
でも、
(咲人に裏切られたら、私は…っ、)
あの夜以降一睡もできなかった。
何をしようにも死体の顔が、原型すらなくなった肉塊の感触でさえも、手から、頭から離れなかった。
食事も喉を通らなくて、あれだけ気を遣ってたのに身支度をする気力もなくて、でも、咲人だけは私の味方だからって、
ずっと愛してくれるって誓ってくれたから、
いつか、王子様みたいに迎えにきてくれるんだって信じてたから、
だから、私は悪くない、悪くないんだから…っ!!!
15
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる