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彼と私の秘密(桃井ver)
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しおりを挟むこんな場所で、誰かに聞かれでもしていたら、
いそいで辺りを見回す。
通り過ぎる数人がちらちらこっちに視線を向けてはいても、足をとめるまでの目立った注目がないことに心底安堵した。
(……――っ、”あのこと”がばれたら、私は終わる)
私のこれからの人生も、未来の夢も、希望も、全部なくなる。
失ってしまう。
「させたのは咲人で、私は悪くないのに…っ、!!」
『宮永 涼』
血まみれの彼を、私が処理した。
原型をかろうじで留めているだけの惨状。
ぐったりとしてずっしり重い、生暖かい感触から冷たくなっていく肉体の処分も、
血が滴り、水で洗っても洗っても皮や臓器の一部か、何か考えたくないモノがこびりついて取れない包丁も、
血しぶきが飛び、水たまりみたいに真っ赤に濡れた床も、
……――――――全部、”私”が
「俺の為なら何でもすると言ったのは貴女です」
「…っ、言った、けど…」
理想以上に優しく、大切な女の子みたいに扱ってくれる彼に、促される通りに夢心地のまま頷いたのは事実だ。
愛してほしい。もっともっと、この人に私だけを見てほしい。そう思って、ただ、その気持ちだけで。
でも、そんなの、何よりも手に入れたい、愛されたい人にされたら従っちゃうでしょ…?
死体を埋めた場所も、使った凶器もすべて咲人に言われるままにしたから、私がしたという全ての証拠を握られているも同然だった。
きっと指示した咲人だって、共犯になるはず。
実際、咲人が指示したことをそのまましただけなんだから。
でも、証拠がないって言われたら?
実行は何もかも私がしたから、彼は一切凶器にも遺体にも触れてない。
あの時はおかしいくらいに気分が高揚していて何も考えられなかった。
咲人が傍にいてくれるなら何でもできると思った。
でも、
(咲人に裏切られたら、私は…っ、)
あの夜以降一睡もできなかった。
何をしようにも死体の顔が、原型すらなくなった肉塊の感触でさえも、手から、頭から離れなかった。
食事も喉を通らなくて、あれだけ気を遣ってたのに身支度をする気力もなくて、でも、咲人だけは私の味方だからって、
ずっと愛してくれるって誓ってくれたから、
いつか、王子様みたいに迎えにきてくれるんだって信じてたから、
だから、私は悪くない、悪くないんだから…っ!!!
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