220 / 305
学校
27
しおりを挟む冗談半分な言葉だったけど、本当にそうしてあげても良い気持ちになってくる。
苦しめることができるのなら、もうなんでもいい。
ふふ。良いざま。いい気味。もっとその顔をしてよ。
絶望に浸って泣いてるのがお似合いなんだって早く気づけ。
「本当に、約束してくださいますか」
念を押すような咲人の声に、「二言は無いわ」と返す。
「そうね。もし、できたらの話だけ、――」
不意に影ができ、暗くなった。
顎に添えられた指に、驚く。
反応できずにいるうちに、顔を少し上に向けられて、…ゆっくりと咲人の顔が近づけられた。
…吐息が触れ、唇が重なる
寸前、
「…っ、何、してるんだ…!!」
焦った声が聞こえ、咲人が遠のく。
近づいた距離以上に離れ、その原因を見れば…音海が咲人を引き離したようだった。
…また、邪魔をされた。
音海の泣きそうな顔を見られるのは万々歳だけど、こんな展開でのそれは望んでない。
「っ、どういうつもりだ、」
「……」
若干泣きそうな辛そうな顔で責める音海に、咲人は何も言わない。
「不必要な接触はするなって、…約束、しただろ」
「…これで夏空様に危害が及ばないのなら、必要なことでしょう?」
「っ、な、」
淡々と、何でもないことだと返す咲人を見上げ、音海が声を失くして絶句する。
咲人と一緒にいて気づいたけど、そもそも音海とは貞操観念が全然違うのだからこういうことで理解し合えるわけが、相容れるわけがない。
咲人にとっては異性とする口づけすること自体、大したことない行為だ。
けど、音海はきっと違う。
大事な人とするものだと思ってるから、こうして止めようとして、けれど咲人にはその行動の意味さえ理解できない。
それに音海は知らないみたいだけど、咲人は自分の容姿も、その利用価値もわかってる。
そしてそれの使い方も知っている。
私は咲人と一緒だもの。わかってあげられる。
「ほら、咲人が良いって言ってるんだから邪魔しないで」
もう一度、と音海を咲人から引き離す。
1
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる