212 / 293
学校
19
しおりを挟むさっくんの身体にあった目を背けたくなるほど多い傷跡。
痛々しいキスマークの数も、血が滲み、鋭利なもので幾度も切ったような真新しい切り傷も。
「さっくんをあれだけ傷つけておいて『幸せそうだった』?」
”…彼女が、俺に望まれたので”
鼓膜に残る声。
すべてを諦めているような、暗い表情。
例えさっくんが受け入れたとしても、あんなの普通じゃない。
好きだからってしていいことじゃない。
ふざけるな。
「お前のおかしい妄想にさっくんを巻き込むな」
「…っ、な、」
睨み据えたまま冷たく言葉を吐けば、一瞬驚き、絶句した。
次第に怒りに顔が真っ赤になっていくのが目に見えてわかった。
「おかしい妄想って、何様のつもり――」
「さっくんの主人はオレだ。桃井じゃない」
「…――っ、」
キッと目を怒らせ、叩こうとしたのか手を振り上げた桃井の腕を掴む。
掴んだまま椅子から立ち上がる。
指に少し力を込めれば、苦痛に顔を歪めた。
「ぅ゛、…な、なに、よ…、」
オレの方が背が高いから、自然と見上げることになった桃井の表情に怯えが滲む。
「もう誰にも傷つけさせないし、二度と誰かにいいようにさせたりしない。」
元を辿れば、桃井が最初にさっくんを執事にしたいっていう桃井の提案を受けたオレにも非がある。
…あの時、了承しなければよかった。
そうすれば、さっくんがあんなに傷つくことはなかったのに。
嫌な思いをさせてしまうことはなかったのに。
後悔に押しつぶされ、瞼を伏せる。
「わ、私がいつ咲人を傷つけたのよ…!さっきから意味わからないことばっかり言わないで…!」
「……」
「咲人だって認めない!認めるわけない!こんなの、絶対に認めない!」
肩で大きく息をし、涙で目を赤くしながら先程より威勢のなくなった態度で、それでも食い下がろうとしてくる。
…まだ言うのか、と呆れる以外なかった。
「じゃあ、実際にさっくんに言われれば納得する?」
「…っ、」
問いかけた温度のない声に、桃井が怯んだように息を呑んだ。
1
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる