191 / 297
それ以上の関係にはなれない
4
しおりを挟む***
…どうして、この男を好きになってしまったんだろう。
熱の余韻でぼんやりとする頭。
部屋の中が暗いから、まだ夜中なのに起きてしまったんだと気づく。
「……」
オレを腕の中に閉じ込めたまま、隣で目を閉じてまだ眠っているさっくんを見つめた。
絶対に苦労する。
今までだってさっくんを本気で好きになった人間をたくさん見てきた。
女性受け間違いなしのイケメンであることに加え、保険医としてもさりげない優しさを見せるさっくんに溺れ、苦しみ続ける女子達をたくさん見てきたのだ。
…まず、ライバルが多すぎる。
しかも本人に想いを伝えても悉くうまく躱される。となればこっそりと恋人になれるように裏で細工しつつ、さっくんと話すどの人間にも嫉妬心を燃やし、お互いに誰が敵かと疑いながら牽制しなければならない。
それらを傍観しながら、あんな風に望みのない恋はしたくないと、何度も思っていた…はずだったのに。
「…今なら、まだ引き返せるかな」
オレの苦悩も知らず、安らかに眠る綺麗な寝顔を見ながら…ううむと唸る。
セックスしている時も頭がおかしくなるくらい動悸がしていたけど、今はただ顔を見ているだけなのに、傍にいるだけなのにその時と同じくらい身体が火照り、頬が熱くなった。
…やっぱり、異常なほどドキドキしてしまう。胸が苦しい。痛すぎる。
(…いつかこれのせいで死んだらどうしよう…)
こんな身が裂けそうな感情を一生抱えていくのかと思うと、想像しただけで勘弁してくれと思う。
昨日も、オレの気持ちを受け取る気はさらさらないくせに、…キスはしてきやがって。
「……~~っ、ぅ、…」
自分の唇を指先でなぞってみて、…眠っているさっくんのそれも見て、…残っている気がする感触に声をおさえて悶えた。
好きだと自覚する前まで、家族として日常のように繰り返していた行為。
もっと深いのだってたくさんしてたはずなのに、別にあの頃はなんとも思わなかった。
恋じゃなかったから。普通にできた。
…だからこそ、さっくんは知らないんだろう。
わからないんだろう。
さっくんにとっては大したことない…触れるだけのキス一つでも、オレがどれ程苦しくなるか。心臓がぎゅぅーーーって痛くなるのか。
それから
…どれ程、嬉しいと思ってしまうのか。
3
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説






【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる