187 / 291
甘くて、痛くて、泣きたい
34
しおりを挟む信じられない。
違うって言ってくれ。
命令してない、こんなことしてくれなんて言ってない。
ただ、オレは好きだって伝えただけで、
だから、あの言葉を命令だと思ってこんなことしてるわけじゃないって。
頼むから、そうじゃないって 今すぐ
声にできたらどれだけ良いだろう。
でも、そうだと言われてしまったらと考えて、口にはできなかった。
「好きじゃないのに、こんなことされても、オレは嬉しくない…っ!!」
くしゃ、顔が歪むのがわかった。
(…ああもう、やだ、)
瞼をぎゅっと閉じたまま、違う、と抗議した。
「でも、夏空様はこうされると嬉しいでしょう?」
「ぁ、あ、ぅうっ」
こんなの泣くしかない。
泣かないでいられるわけがない。
奥に挿入されて、もう全部知り尽くしたように短いストロークで弱いところを細かく突き上げられて抜き差しされる。
さっくんの表情だって、想像していたような甘いものじゃない。
冷めたような表情で腰を振ってるだけだ。
けど、そうやってどうでもよさそうにやっているのに、的確にイイところを突いてくるから、こんな会話をしていながらもすぐにイキそうになる。動かれる度に異常に腰が甘く痺れ、確かに脚が、下腹部が、全身がびくつく。
それに、と小さく呟く声。
「…他に、俺が貴方に与えることができるものなんかありません。」
「――っ、」
律動が止まった一瞬。
零された声は、
あまりにも… 空虚 だった。
人形のように綺麗な顔と、温度のない瞳。
影のある表情で、目的地を見失った子どものような仕草で睫毛を伏せた。
「そんなこと、」
「夏空様が気づいていらっしゃらないのなら、教えて差し上げましょうか?」
「…何、を…?」
瞬きをするオレの頬に触れ、柔らかく儚げに微笑む。
それは、食事の所作や挨拶の礼儀、そういう基本的なことを教えてくれるときのような笑顔で。
「貴方は、宮永涼と身体を重ねて…好きだと言った」
「…ッ、」
静かな声が紡いだ言葉に、息を呑む。
鮮明に思い出されて、つい視線を逸らしてしまった。
「それなのに、1日経たずに俺とセックスをして、…好きだと仰られている」
「っ、でも、それは、」
(今になって気づいたからで、涼のは間違ってたってわかったから、)
そう言おうとして、さっくんの表情に、言葉を失った。
「…貴方が好きなのは、俺ではありません」
零される声音が、
いつも優しくて、癒されるようなあたたかい大好きな声が、
「ただ、気持ちいいことが好きなだけなんですよ」
「……っ、」
今は、酷く胸を抉った。
1
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
小さい頃、近所のお兄さんに赤ちゃんみたいに甘えた事がきっかけで性癖が歪んでしまって困ってる
海野
BL
小さい頃、妹の誕生で赤ちゃん返りをした事のある雄介少年。少年も大人になり青年になった。しかし一般男性の性の興味とは外れ、幼児プレイにしかときめかなくなってしまった。あの時お世話になった「近所のお兄さん」は結婚してしまったし、彼ももう赤ちゃんになれる程可愛い背格好では無い。そんなある日、職場で「お兄さん」に似た雰囲気の人を見つける。いつしか目で追う様になった彼は次第にその人を妄想の材料に使うようになる。ある日の残業中、眠ってしまった雄介は、起こしに来た人物に寝ぼけてママと言って抱きついてしまい…?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる