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甘くて、痛くて、泣きたい
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しおりを挟む息を、呑んだ。
……綺麗な顔を歪め、不機嫌そうに、今にも泣き出しそうに眉を寄せている。
呼吸をするのも忘れて、惹きつけられるように彼の表情から目が離せなかった。
「――っ、」
好きって言葉じゃ足りないくらい、…重く、
さっくんがオレをそこまで思ってくれてたんだ、って知って、心臓が…驚くほど大きく脈を打つ。
ドクン、って狂おしく胸を焦がすような鼓動が高鳴って、体中にはがゆい熱が広がった。
じわ、と瞼が熱くなって、凄く嬉しくて、…泣き叫びたいような気持ちになる。
けど、…それと同時に、何故、と疑問が浮かんだ。
(…どうして今も、酷く傷ついて、泣きそうな顔をしてるんだろう)
オレはさっくんが好きで、…さっくんだって、オレを好きでいてくれて、
だったら、なんで、…どうしたらいい、どうしたらそんな顔をさせないでいられるのかってうまくまとまらない思考がぐちゃぐちゃになって、いっぱいになる。
昨日の泣き顔を思い出して、おそるおそるその頬に手を伸ばす…と、
「…っ、」
「……ぁ、」
少し指先が触れれば、彼が怯えたように、驚いたように微かに震えた。
見慣れない反応と、拒絶とも思えるような動作に、一瞬思考がショートする。
…ご、ごめんと、消え入るように謝って、中途半端に伸ばした手を引っ込めた。
それを見て、さっきのは自分でも無意識の行動だったのか、一瞬後悔のような色がその顔に滲んで、…ふいと視線を逸らされる。
と、
「…っ、ひ、ぅ」
ぐちゃ、と音を立ててさっくんが腰を引いた。
意図的ではないのはわかっていても、ナカの液体をなじませるように襞を擦りながら抜かれるちんちんの感触に、声を漏らす。
オレの肌と彼の亀頭の間に卑猥な白い粘着質の糸が引き、孔からごぽ…と温かい精液が零れ落ちてきた。喪失感にひくひくと粘膜が切なげに痙攣する。
「でも、貴方は俺に…香織を選んでほしいんでしょう」
ベッドの端に腰をおろした彼は、自嘲気味に掠れた声を落とした。
俯いてて、それに部屋も暗いせいで余計に影になってるから、表情が見えにくい。
……寂しげに翳ったその横顔に、あまりにも予想外の言葉に、一瞬言葉をなくし、首が痛くなるほど横に大きく振った。
「違う、オレはそんなこと、…っ、」
「では、夏空様は、」否定しようとすれば、それを遮るように被せられる強い声。
「…もし、俺が本当に貴方より香織を好きだと言ったら、どうなさるおつもりだったのですか」
「……ぇ、」
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