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涼とお家で隠しごと
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しおりを挟む逃げられないように固定して、じっと見上げた。
「…っ、何、」
「いいから。大人しくしてろ」
困って戸惑っているような、複雑そうな表情をしたさっくんが、……少しして観念したようにこっちを見下ろす。
ようやく納得できるかっこうになって、うむ、と満足した。
…ちょっとだけ、時間を置く。
迷う。どう言うべきか、なやむ。
いまさら、なやんで、ちゃんと考える。
それから、ゆっくりと、息を吸って、
「オレは、涼よりもさっくんの方が好きだぞ」
「…っ、」
真剣に、思いを伝えた。
瞬間、
彼の表情が、見てわかるくらいに揺らぐ。動揺する。
「ていうか、…オレは、さっくんが戻ってきてくれるなら、涼がいなくても平気だ」
流石にこの言い方は酷いかな。
けど、他になんて言えばいいかわからなかった。
…そもそも、だ。
やっとできた最愛の人、っていう良くわからん勘違いを勝手にするな、と機嫌をかなり損ねている。
凄く損ねる。むっとする。
「確かに、ヤッてる時は、…凄く好きだって思った。もっとこれから一緒にいて色々したい。って、思った」
言葉にしながら、その感情を、体感を、鮮明に思い出してきた。
思い出して、やっぱり結構気持ちよかったから、身体が反応しそうになる。
けど…、んーと、首を傾げた。
「…はず、なのに、なんか今は涼のことを考えても全然ドキドキしないんだ」
もちろん、友達としては好きだ。
初体験の相手としても、確かに特別だ。けど、それだけで、ほかには何の感情もない。
壊れたって言葉もいまいちぴんとこなくて、その言葉の意味がもし悪い方だったらって心配はしてる。
…してるが、今はそれより、
「むしろ、オレがさっくんを売ったとか、全然違うのに、…そう思われてるかもしれなくて、」
口ごもる。
ああ、なんて言ったらいいんだろう。
目を合わせて話そうとしたのはオレの方なのに、戸惑い、目をそらす。
「そう思ってる、らしい…さっくんが、なんていうか、…凄く、泣きそうな顔をしてるから、」
むずかしい。
考えてることを、この形にしづらいきもちをまとめて、言葉にするのが、難しい。
「その方が、…めちゃくちゃ嫌な感じでドキドキして、胸が苦しくなった」
苦しくて、痛くて、これ以上…辛そうな顔を見ていたくないって思った。
可哀そうにってオレを抱きしめる手も、言葉も、全部がウソっぽくて、演技っぽくて、…何かを隠してるみたいで、それを見せられるこっちの気になってみろって言いたい。
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