108 / 293
学校とさっくんと桃井
2
しおりを挟む「…なんでだよ」
俯き、声を絞り出した。
沈んで暗くなる気持ちがそのまま音になってしまう。
「休むはずだったなら、…なら、」
わざわざ聞かなくてもいいのに。
別にさっくんなんか、
もうオレには関係ないんだから『そっか!わかった』って軽く笑ってベッドを貸してもらえばいいだけなのに。
(…自分を一番だと思ってくれてた家族が、他の人を大切にしてるのって、こんなにショックなものなんだ)
改めて実感する。
「なんで、」
無意識に気持ちが会話から逃げようとして、地面についてる汚れを無意味に睨んでいると、
「さぁ、何故でしょう」
「……っ、」
オレの掠れた声で問いかけた疑問を、
…飄々と、まるでどうでもいいことみたいな雰囲気でさらりとかわされた。
(……答えて、くれないのか)
なんとなく、声がいつもより冷ややかに聞こえるのは気のせいじゃないような気がした。
顔を見たら、それこそ冷たい表情をしていそうで、…それが怖くて、俯いたまま言葉だけを紡ぐ。
重い空気に、喉が渇く。
ぱっさぱさに乾く唇を軽く舐め、ふ、と息を吸った。
「…あの後、何時間も、…桃井と、何してたんだ?」
戻って来た時の二人のただならぬ雰囲気。空気感。
ずっと気にしないようにしてたけど、でも、それでも気になりすぎてそれからの授業なんて、全く頭に入ってこなかった。
けど、口に出して聞いた後、
「……」
「………」
何故かさっくんが無言になってしまった。
そのせいで、すぐに気づく。
(…て、これだと、まるでオレが気にしまくってたみたいじゃないか)
ハッとして、その瞬間ピシッと硬直する。
頬が熱くなる。
…さっくんからしてみたら、
自分のことを気にして気にして気にしまくってて、
しかもこうやって保健室に来たのも、体調不良だと嘘ついて二人の仲を探りに来たみたいに思えてしまうんじゃないか。
「…(ああ何やってるんだ、オレ)」
こんなんじゃ、またいつもみたいにさっくんに笑われてしまう。
5
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる