90 / 293
学校とさっくんと桃井
11
しおりを挟むけど、気は抜けない。
ここでもし拒否されたら、今日の計画すべてが台無しになってしまう。
「昨日喧嘩したってさっき言ってたでしょ?なら、今日くらい良くない?」
「…っ、…でも、…」
痛いところを突いたらしい。
音海くんの顔が苦しそうに歪むのを見て、内心ほくそ笑んだ。
「ね、一生のお願い」
「……っ、」
「喧嘩してるなら私が詳しく咲人様に話を聞いてあげる。仲直りできるきっかけになるかもしれないよ」
勿論そんな気はさらさらなかった。
どうでもいいことで貴重な時間は減らせない。
今日一日で咲人に気に入られさえすれば、期限なんてないようなものだ。
他はどうなってもいいんだから。
けど、…まだ迷っているらしい音海くんは簡単には頷いてくれる気配がない。
そのもったいぶった様子に苛々してくる。
(…早くしてよ。いいじゃん一日くらい。今までずっと独り占めしてきたんでしょ)
「だったら、本人に直接聞けば良いんじゃないかな?音海くんの物じゃないって言うなら、咲人様が望んだら良いんだよね?」
「…っ、…さっくんが、いいなら、…そう、だな」
「じゃあ、呼んで聞いてみてくれる?」
苦々しく頷いた頭に、内心安堵する。
…こんなことで、無駄に緊張させないでほしい。
「…うん。来てくれるかわからないけど、」と浮かない顔でそう続ける音海くんに、一瞬『は?』ってなりかけたけど、表情に出さないように我慢した。危ない危ない。
来ないはずがないのに。
…だって、咲人が非番の日でさえ、音海くんに何かあったときには駆けつけてくるんだから。
音海くんがどういう契約をさせて無理に執事にさせたのかはわからないけど、無茶をさせすぎじゃないかと思う。
7
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる