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学校とさっくんと桃井
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…で、誕生日当日。
「音海くんの命令で、彼を私の執事にして」
そういう状況にもっていっても私が恨まれにくくなるよう、グループの皆にはあらかじめ先に話しておいた。
咲人が執事になれば、当然私は彼の特別として扱われる。突然近づいた距離は、周りからすればただならない関係にだって見えることもあるだろう。
だから、『咲人様に告白しようと思うんだけど、やっぱり無理かなぁ…』って、咲人が執事になった時わざとそう見えるように聞いてみた。そうしたら皆は『そんなことないよ。香織ちゃんなら大丈夫だよ』って賛成してくれた。
(……今までずっと我慢していた分も、みんなに見せつけてやりたい)
勿論、教師と生徒が付き合うこと自体が基本的に認められていないのは知っている。
でも、それが何だっていうの。
私の彼氏だってことがばれて退職するその時こそ、本当に咲人が私だけのものになるってことなんだから。
再就職先はパパにすぐに紹介してもらえるし、何なら働かなくてもいい。
傍にいて、恋人でいてさえくれたら。
……愛を囁かれて唇を重ねて、押し倒されてって何度想像したかわからない。
部屋に二人でいるのもいいけど、たまには外で待ち合わせてデートもして愛を深めていかなくちゃ。
私は彼を見るだけで苦しくなるくらいドキドキして好きって思うけど、大人の男の人はそうはいかないかもしれない。
飽きられたくないし、マンネリ化もされないようにしないといけないから。
それから、最終的に結婚して子どもができるのは当然よね。
咲人に似て、絶対に綺麗な男の子になる。
でも、今のままの咲人も愛しているからこそ、すぐに関係を公開するような行動を起こす気はない。
ばれないように他の生徒に内緒で空き教室でキスしたり、秘密でお家デートして流れで抱かれて、…けど学校では普通の教師と生徒に見える感じにして…こっそり付き合うっていうのも、危険な恋って感じがして魅力的だし。
……相手が咲人だから猶更ドキドキするし、絶対に最高の感覚を味わえるに決まってる。
本当は皆だって、私と同じ期待をしたことが一度はあるはずだ。
手が届かない存在ってわかりながらも、咲人に惹かれてるのに。
先生と生徒って関係に加えて、音海くんの執事だからって遠慮してる。
そうやって一歩踏み出せないでいるくせに、ばれないように睨んでくる。
それらに気づかない振りをして、ほっとした風を装いながら『ありがとう。皆大好きー!』なんて言ったけど、内心は感謝なんて更々しているはずがない。
当たり前だよね。
だって、クラスで一番可愛いのは私なんだから。
なら、咲人の傍にいるのを許されるのは私くらいしかいない。
(ブスどもは黙って私が選ばれるのを見てるがいいわ)
遠くから、羨望と少しの嫉妬と諦め…様々な視線を受けながら、目の前に意識を戻す。
…と、不機嫌に見据えられて、どきりとした。
「…っ、」
「何だよ、その言い方。さっくんは物じゃないんだけど」
「…ぁ、ごめんね。違うよ。勿論そんなこと思ってない」
(…音海くんって確かに皆が美少年っていうくらいには顔立ちが整ってるから、…怒ると凄く冷たい雰囲気になるんだよね)
咲人とか日下部君といる時はちょっと子どもっぽくなって可愛い感じになるから油断していた。
表情を取り繕いながら、あーあ、と落胆する。
これであげるって言ってくれたなら楽だったのに。
咲人は柔らかい物腰に加えて大人な色気があるし、容姿が格段に整っているから勿論言うまでもなく女子達に人気だ。
けど、それと同じくらい音海くんも格好いいし性格が猫みたいで可愛いって人気だから、…できるだけ機嫌を損ねたくない。…できるだけ、敵には回したくない。
………でも、
今頼れる相手は目の前の彼しかいないわけで、
…面倒くさいなぁ。
「…それに、執事にしてほしいって…言われても、」
「あ、一生って意味じゃなくて、今日だけ。誕生日だけだから」
戸惑った様子で瞼を軽く伏せる音海くんに、慌てて首を横に振った。
一歩引いてみることで、その表情がほんの少しだけ安堵したようなものになる。
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