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貴方の首筋にかぶりつく
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しおりを挟む多すぎて想像もできない。
「夏空様はご存知ないかもしれませんが、洗濯の畳み方、部屋の掃除の仕方、朝の挨拶等…ご家族によって異なるのですよ」
「…そう、なのか」
皆オレたちと同じだと思ってた。
(あ、でも正孝のところは執事がいないって言ってたっけ)
正孝にはお母さんとお父さんがいて、けど、オレにはその人達じゃなくてさっくんがずっと一緒にいてくれる。
だから全然違うし、一緒じゃなくて、だから……
「んー…難しくてわかんなくなってきたー…」
頭がいたい…。
ぐぬぬと熱くなってきた頭に唸っていると、額に冷たい手とか冷えピタをあててくれたさっくんが心配そうな顔をして、続きはまた今度にしようかと言ってくれた。
けど、首を横にふってぐったりもたれながら「どんな風に違うの?」と聞いてみる。
「例えば…、…そうですね」
「うん」
「先ほど…御入浴の際には、俺が夏空様の御身体を洗わせていただきました」
「うむ。洗ってもらったな」
執事にしてもらうのが、音海家の代々のやり方なんだと聞いた。
「………」
何故かその続きを言わず、静かな沈黙だけが広がって首をかしげる。
「……さっくん?どうし…」
「鮮明に思い出してしまいました…。あの時の泡で遊んでいらっしゃった夏空様も太陽のような笑顔とキラキラした瞳が大変麗しく可愛らしいご様子で…」
「……わかった。わかったから…」
だから勝手に頬を赤くするな。
今度はオレがため息をはいて、先を促した。
わざとやってるのかって思うくらいに、さっきから話がずれすぎる。
「…御入浴の際、確かにそうしていない…自分で身体を洗うように躾けている家も存在しています。」
「!」
なんと!とびっくりする。
目をまん丸にするオレに、ふふ、と可笑しそうに笑ったさっくんが「でも、それも一部の話です」と続けた。
「先程申し上げた通り、俺達と同じ方法で入浴を行っているご家族も勿論いらっしゃいます」
「…えっと、じゃあ…自分で洗うとこもあれば、家族に洗ってもらうとこもあるってこと?」
ごしごしーっと身振り手振りしながら首をかしげて聞くと、「はい」と微笑みまじりの返事が返ってくる。
よく出来ました。偉いですね。みたいな感じに頭をなでなでされた。
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