貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
上 下
41 / 308
自慰行為とやらしい行為のその後

7

しおりを挟む



集中しすぎてたせいか、隣からかけられた声に驚きすぎて勝手に身体が跳ねた。


「な、なんだ…っ!」

「にゃーって鳴いてみてください」

「っ、?…わ、わかった」


もしかして、この猫は言葉を話せるのか。もしくは、オレが猫の言葉を理解できるようになるとか。

考えても仕方がない。

とりあえず、さっくんのアドバイスに従って、すう、と息を吸う。


「にゃ、にゃー…!にゃ…?」


とできるだけ迫真に迫った声で猫にしゃべりかけてみた。


…けど、


「…………………」


ち ん も く。

猫はただコイツ何してるんだという感じでオレを見てただけだった。

辛い見つめあいだけが続き、待っても待っても世界は動かない。

……何故だ。


「…っ、何にも話しかけてこない…!」


絶望!

と、涙を滲ませて横を振り向こうと…して


「…っ、本当…貴方が可愛すぎて、俺の方が先にどうにかなってしまいそうです」


なんて熱を帯び、照れと歓喜を滲ませた声と同時に、ぎゅうっと後ろから抱きしめられた。

ちゅ、と頭の後ろらへんにキスを落とされ、薄いTシャツの上から羽織っていたパーカーのフードを頭に被せられる


「……わ、?なに…?」


そして、肉球のついた猫手袋を、手に嵌められた。
ついでに、がお、とする時のように手首の下を支えた手に、持ち上げられる。



「今、夏空様は猫です」

「…へ?」

「なので、猫同士仲良くしましょう?」


後ろを見上げると、にっこりと微笑まれる。

「ご覧ください」と差し出された鏡を見れば、ああ、そういうことかと納得した。

(…確かに、今のオレの格好は猫手袋嵌めてるし、被ってるフードにちゃんと耳もついてるから、猫っぽい、…けど)


「…な、仲良くって、」

「まぁ、猫同士というのは半分冗談ですが、…最初は直接ではなく、手袋越しに触るところから始めてみましょうか」

「…あ、そっか。その手があった」

「そのために、まずはゆっくり深呼吸して、肩の力を抜いてください」

「すー、はー…ふぅ…」

「夏空様が普段していらっしゃるように、友人同士が話す感じで接すれば…相手もきちんと応えてくれますよ」

「…っ、うん!」


後ろからさぽーとしてくれるらしい。
そうやってオレより大きな身体にぎゅうって抱きしめてもらってると安心できる。

(そうだな。肉球手袋なら、噛まれても痛くない)


「…さ、触る、ぞ…」

「はい」


後ろでぎゅっとしてくれてるさっくんの声を確認し、おそるおそる手を伸ばした。
どきどき、と高鳴る胸をおさえ、ゆっくりと距離をちかづけていく。

…と、


「…っ、」


ぱふん、と肉球手袋越しに、手が、猫の身体があたる。
…けど、ちょこんって感じに座っていた猫が不意に動き、すぐにびくっと手を引いた。


「わ、わ、ぎゃ…っ、」


パニックになって後ろの身体に縋る。
さっくんが「大丈夫。怖くないですよ」と微笑み、よしよしとオレの頭を撫でる。
もう一度元気づけるみたいにぎゅってしてくれた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...