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壊れて、
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しおりを挟むその証拠にほら、…泣きそうだった彼の綺麗な顔は、おれの言葉によって更に痛みばかりを滲ませていて。
(…ああ、また『おれ』が苦しめた)
くーくんの望まないことなんてしたくないのに。
それでも、おれはくーくんを守るためだと騙って、自分のために彼を傷つけている。
…ほんとはわかってる。
こんなことで、彼を喜ばせられることはないってわかってる。
…わかっているのに、口から零れる言葉が止まってくれない。
「ね、くーくん…嬉しいって言って…?」
これしか思いつかないんだ。
おれがくーくんのためにできることなんてほとんどなくて。
何の取りえもなくて、出来損ないのおれには、こんなことしかできなかった。
…それでも、少しでもいいから褒めてくれないかな。
良く出来たねって、昔みたいに優しく笑ってくれないかな。
(……うっとうしいな、おれ…)
うざいことをしている自覚はある。
…だけど、
お願いします。これがおれのできる全てなんです。
もっと良いのは二人の邪魔でしかないおれが今すぐに彼の目の前から消えることかもしれないけど、でも、くーくんの傍にいられなくなるのは嫌で、それだけは、絶対に嫌で、
「……(けど、)」
(もし、おれが忘れたふりをしてなかったら、くーくんは今頃)
好きな人と一緒にいられたのかな。
何事もなかったみたいに付きまとうおれに縛られずに、澪と幸せに過ごしてたのかな。
「…はは、」
心臓にまるで無数の刃が突き刺さっているみたいだ。
ゆらり、
彼の頬に、おそるおそる手を伸ばす。
…と、その肌に触れ、撫でる。
(…拒まれ…ない…)
そのことに、心底安堵して頬を緩めた。
でも、それすらうまくいかない。
頑張ってるのに、どうしても頬が固くて
…にへ、と笑ってみれば
おれを映した彼の目が、驚いたようにほんのわずかに見開かれる。
「…おねが…ぃ…だから、」
おれがいても良いっていって。
おれが傍にいてもいいって。
価値があるんだって、役に立てる存在なんだって、言って…くれないと、
(…消えない、記憶が消えない)
くーくんが他の女の人を抱く姿なんて思い出したくない。
好きなひとができたって言われたことを思い出したくない。
これからも、忘れたふりをしていれば楽なのに。
見ていないのだと、そんなことは知らないと隠していればいいのに。
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