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壊れて、
23(椿side)
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その身体が崩れ落ちる前に、受け止める腕。
胴に回した手で抱き寄せ、家畜の首元に顔を埋めたソイツはゆっくりと息を吐く。
安堵したような表情を浮かべる蒼の表情は、やはり俺に対するものと全く違う。
…相変わらず、腹が立つほど大事にしているらしい。
けど、前の時のソレとも何かが異なっている気がしたが…理由はわからなかった。
左腕をやや不自由そうに使いながら家畜を抱き上げ、部屋を去ろうとする蒼に、不意に生じた疑問を投げる。
「なぁ、入ってくるタイミング…良すぎねえか」
「………」
俺が家畜を殴ろうとする寸前でわざわざ現れやがって。
まるであの瞬間を狙って来たような違和感。
当然、天井にあるカメラでこのコンクリート部屋はプライベート(用を足そうとしようがどっちにしろ立てねえからプライベートもクソもないけど)関係なく監視されているはずだ。
「しかもなんだよそれ。家畜が逃げねえようにって必死じゃねえか。」
これが、笑わずにいられるか。
やはり俺様がいなくなってハッピーエンド、『怪物がいなくなり、王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ』って展開にはなっていない。
「そのなっげえ鎖、どこまで続いてんだ?前にお前らが二人でいちゃついてた部屋か?」
抱き上げられている家畜の両手首に嵌められている枷、そこにある鎖は扉を超え、どこかわからない方へと繋がっている。
屋敷のどこへ行こうとも、家畜がどこに行ったのかすぐわかるようにしてやがる。
…っつーことは、こいつは家畜がすぐに俺のところにいるってわかったはずだ。
にもかかわらず、すぐには取り戻しに来なかった。
この嫉妬深い王子様が、だ。
大事なものを触られることすら嫌悪し、見ただけでも俺を殺しかねないのに。
「なんで、来なかった?…いや、来れなかった、か?」
揶揄いを含んだ声で言ってやれば、足を止め、静かに振り向く。
俺を見下ろす蒼の瞳に、全くと言っていいほど温度は感じられない。
「当たりか。は、つーか何してんだお前。まさかマジで浮気してんの?」
「……」
否定されないことに、思わず目を瞬く。
「そいつお前が”澪を選んだ”とかなんとかって言ってたし、お前も好きな人ができたってさっき、」
「…今日は良く口が回る」
状況が理解できず、何とかしてこの面白そうな展開の情報を引き出そうとすれば、遮るようにぽつりと零された言葉。
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