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しおりを挟む…言わない方が良かったのかな。この言葉は、誰かにつけられた傷と同じように…くーくんを苦しめてるのかな。
わからない。彼の本当の気持ちが分からないから、怖くて、…胸が苦しくて、俯く。
(…おれが「好き」って言うことは、もしかして迷惑なんだろうか。)
くーくんなら受け入れてくれるからと、調子に乗っていたのかもしれない。
いつも好きって言えば、同じように返してくれる。
だけど、言ってくれる時、…彼はいつも辛そうで、
「……」
身体を離す。
少しだけ距離を取って…膝の上に乗せた手で、ぎゅうと服を握った指先が白くなるくらい力を入れた。
今まで、何度となく呟いた言葉を、零す。
「ごめん、なさい」
「…なんで、」
「だって、…」
くーくんが、…泣きそうになってるから。
言うたびに、こっちの心臓が鷲掴みにされるような気持ちになるぐらい、…苦しそうな顔をする、から。
「ごめんなさい」もう一度、謝る。
「…くーくんが嫌な気持ちになるんだったら、もう言わない、ようにする、。だから、ごめんなさ…っ、」
「…っ、違う…」
焦ったような声音と表情で、羽交締めにするかのように掻き抱かれた。
ぎゅううと抱きしめられて、目を瞬かせる。
「…あ、の、…くーく、」
「…違うんだ。俺の方が、ごめん」
「……ちがう?」
「…うん、」
少しの沈黙の後、ぽつりと吐息まじりに零される感情のこもった声。
「…さっき言ってくれたことは、凄く嬉しかった」
「……っ、じゃあ、どうして、」
「ただ、…やっぱり俺はおかしいんだなって思ったから」
「だから、まーくんのせいじゃない。勘違いさせてごめんな」と髪を梳くように撫でる手に安心して、息を吐く。だけど、「…おかしいって、…?」と疑問を口にした。
彼はおれの視線を受けて、少し気まずそうに言い淀んで、
目を逸らして若干俯き加減になるくーくんに先を促すと、躊躇いがちに開かれる唇。
「…嬉しい、はずなのに」
「……?」
「…まーくんに受け入れてもらえると、…不安になるんだ」
「ふあ、ん?」
予想外の言葉に、目を見開く。
その言葉を零した彼は、…酷く寂しそうな、暗い瞳で微笑んでいた。
どうして、またそんな顔をするんだろうと不思議に思う。
(…おれが、受け入れたら不安に…なるって、…)
なんで、
……ああ、また泣きそうになる。
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