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過去【少年と彼】
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………………
夢に見る。
数日たった今でも、あの日のことを悪夢として見る。
「椿、そこまででいい。蒼にはそろそろ別の余興を愉しんでもらおう」
あの人の声で、今まで目の前で嗤って愉しんでいた男が腰を引くことでオンナとしての役割を果たしていたそのナカから俺の……を抜いた。
下半身に残る生々しい余韻と、男の孔から零れる…ソレ。
「この濃くて熱い白い液体……誰のだと思う?」
「……」
声に答える気力もない。
「椿だけじゃ足りないだろう?もっと沢山の人間と経験があった方がアレのことを忘れるきっかけにもなる。二度と逆らおうだなんて思えないように、さっきとはまた違う嗜好で楽しませてやれ」
「……、…」
あの人の一言でゾロゾロと黒服たちが動いて近寄ってくる。
遠巻きに見ていた男が、女が、近づいてくる様は酷く恐ろしい。
手下たちに囲まれて本能的に恐怖を感じてからだが震えた。
父親は大事な取引先との用があるらしく、女に手枷の鍵を渡してどこかに消えた。
「蒼様」
声をかけられる。
蒼様、と一応敬称で呼ぶくせに俺を敬う心なんて全くない。
涙がこびりついた頬が、これでもかってほど水分を吐き出した眼球が、ヒリヒリと痛い。
嫌なのに散々したくないことをさせられて、希望も何もかもを失っていた。
今さっき散々好き放題身体を使われたせいでショックで呆然としていた俺はその声に意識を取り戻して、抵抗しようとかろうじで動く身体をねじる。
でも、大の大人に力で敵うわけがなかった。
「綺麗な蒼様の身体に色々と教えて差し上げましょう。大人の楽しみ方ってものを…」
「……っ、…は……?」
言っている意味がすぐには理解できない。
黒服のスーツの男たちがさっき嫌というほど注射を打たれまくったのと何度かの行為のせいでうまく立ち上がれない俺の鎖を引っ張って引きずるようにして、どこかに向かう。
次第に向かっている部屋の方向がわかって血の気が引いた。
「…あれ、は…」
(あの部屋は、)
前、一度入った覚えがある。
その時はナイフを持って、ずっと周りを遠ざけていた。
…父親の下僕たちの遊び部屋。
色んな人間を連れてきては、そこで色んな玩具を使って弄んで犯して遊ぶ。
下僕たちの憂さ晴らし。
何回も見せられたからそこに囚われた人間がどんなことをされるのか、嫌というほど知っている。
(…おれは今から、何を、される…?)
「…っ、」
嫌だ。
身体が、歩く足が無意識に震える。
…でも、ここで抵抗すればもっと酷いことになる。
逃げられない。
思い出す。
あの部屋で、今自分が向かっている部屋で他の人間がどんなことをされたのか。
思い出す。
あの時の匂いを、あの時の光景を。
思い出す。
父親がしていた行為を、
身体が、
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
部屋の中に入らされる。
「さあ、蒼様。お姉さんたちと一緒に遊びましょう?」
「…っ、やめろ」
「綺麗な黒髪に綺麗な御顔に綺麗な身体……、ああ、本当にお人形さんみたい……こんなに美しい存在が、今から全部私達のモノになる…」
「…ふざけんな…っ」
やっとのことで行為によって酷く掠れて震えた声が絶望を叫ぶ。
さっきので終わったんじゃないのか。
嫌なことは全部やったんじゃないのか。
冗談じゃない。
手が伸びてくる。
1つじゃない、2つでもない、数えきれないくらい多くの、手。
周りに群がってくる女たちに比べて、男とはいっても子どもでしかない自分にできる抵抗なんか限られている。
枷から伸びる鎖が、音を鳴らす。
身体が震えて、必死に叫びたくなるのを堪える。
を躾けるために、
の身体に触ろうと、 を味わおうと、 を壊そうと、
「…っ、」
「大丈夫ですよ。蒼様が抵抗さえしなければ痛いことは何もありません」
そんなの何の慰めにもならない。
触られる。
興奮に色を染めた瞳で、身体に触れられる。
舐められる。まさぐられる。
「やめろ…っ、嫌だ…っ、やめろ…!!」
「『女』の良さを頭がおかしくなるくらいに覚えさせてほしいと、清隆様にはそう言われただけです。拒むのは勿体ないですよ。今までの玩具とは違って、蒼様には男が挿入しないように指示されてるんですから。良かったですね」
「そうですよ。蒼様はただ私たちと思う存分にセックスして気持ちが良いままに腰を振るだけでいいんです」
服を脱がされる。
手足を押さえつけられる。
どれだけ叫んでも泣いても、終わることはない。
「ふふ…いっぱいイかせてあげる…」
「蒼様、一緒に楽しみましょう」
「誰が最初に蒼様の子を孕むか、勝負ね」
「子どもができれば、蒼様に似てきっととても美しい子になるわ。そのうえ妻の座も手に入れることができる。もしできたら末永くよろしくお願いしますね」
……『こども』と、口にする女に血の気が引き、鳥肌が立つ。
俺への罰に、当然ゴムなんてつける奴がいるはずもない。
動揺は、すぐに性器を締め付け、飲みこんでいく別の感覚によって無理矢理思考を奪われる。上に被さっている女に口を塞がれ、舌を絡ませられる。
終わらない交尾と、吐くほど何度も覚えさせられる快感と絶頂と射精。
拒否を示しても唇を重ねられ、その間にも俺の上に代わる代わる馬乗りになる、顔も記憶できない人数の女達。
気持ち悪い。
気色悪い。
(抵抗したって、泣いたって逃げられるわけじゃない)
誰も助けてなんてくれない。
でも、
「…っ、やめろ…――ッ」
そうして、悲鳴を上げた自分の声で起きる。
身体中汗びっしょりで、心臓の音が煩くて全身に響く。
実際はそんな大声をあげてないのに、どんな音にも敏感になった自分の耳は些細な物音でも起きるようになった。
気絶するように寝て、起きる時は永遠とそんな目覚めを繰り返す。
周りに人がいると眠れなくて、だからずっと起きている。
昼だけじゃない。
夜も、本来なら寝る時間でもずっと部屋の隅で背を壁に預けて周りに誰も近づいてこないのを確認し続けなければ震えが止まらない。
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