手足を鎖で縛られる

和泉奏

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蒼のいない朝

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(…――え…?)


「あお、い…?」


意識するよりも先に、口からそんな言葉が漏れる。


「へ?」


目の前の顔が、俺の言葉にキョトンとして首を傾げた。
でも、そんな反応を違和感に感じることもなく、見つけた歓喜に胸が膨れ上がる。

やっぱり、いた。

そうだ。蒼が、俺を捨てるわけなかったんだ。

安堵と喜びによってぶわああとあふれてきた涙のせいで、視界がぼやけて目の前の顔さえ、見えなくなってきた。
何も、考えられない。



蒼がいる。それだけでいい。

…それだけで、もういい。


「…あお、い…っ」


気づいたら、腕を伸ばして抱き付いていた。
戸惑う蒼の背中にぎゅっと手を回して、ぼろぼろと泣いて、その服を濡らす。


「え、ちょ…っ、あの、」


戸惑ったような焦ったような声が聞こえる。

ばか、ばか、ばか。
蒼のバカ、蒼のことなんか、本当に嫌いになっちゃうところだったんだぞ。
次から次にあふれる涙のせいで、嗚咽が漏れる。
良かった。いた。蒼が、いた。


「蒼のバカ…っ、俺を一人にするな…ッばいばいなんていうな…っ、…ッ」

「………」


ぎゅうと服の裾を強く握りしめながら、ばか、ばかと罵る。
戸惑ったように俺を見下ろして、抱きしめ返してくれさえしない蒼に、口がへの字になる。


「…なんで、」


いつもなら抱きしめれば抱きしめ返してくれるのに、なんでそうしてくれないんだと更に怒りが募って、ムッと眉を寄せて、涙を大量に零しながら蒼を見上げた。
俺と目が合って、彼は困ったように眉を垂れさせる。


ああ、本当は蒼がいたことだけで、もういいのに。

結局は離れなかったんだから、今傍にいるんだから、それでいいのに。
泣いてるせいで、目の前の蒼の顔がよく見えない。


「俺は、蒼の傍にいたいのに…っ、ずっといたいのに…っ、いきなり捨てるなんて、酷いだろ…っ」

「……」

「なんで、何も話さないんだよ…っ」


ひっくひっくとしゃくりあげながら、やっぱり傍にいるって安心したくてぎゅうぎゅうともっと強く抱きしめながらただ、喚いて泣く。

遠慮がちに、子供のようにわんわんなく俺を慰めるようにぽんぽんと頭の上で手がバウンドするのを感じて、余計に涙が零れた。

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