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足音
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しおりを挟む俺の表情の変化を見て、板本君があっと小さく慌てたように声を上げる。
「あの、この前はごめんね…。あの時はどうかしてたっていうか…。そのどうしても、蒼様が君の事ばっかり気にかけるのが許せなくて、あんなこと言っちゃったんだ」
俯いてしょんぼりとした顔で謝ってくるから、その様子を見てられなくて反射的に「あ、いや、大丈夫だよ」と首を横に振った。
…でも、確かに板本君の言いたいことはなんとなくわかる。
蒼が、前から俺を他の大事なことより優先しがちだったのは知ってるから。
それなのに、知らなかったとはいっても、わざわざ板本君の目の前で誘ってしまった。
誰だって、自分の方が最初に約束してたのに、自分との約束よりも後から来た人間の方を選ばれたら怒るはずだ。
「…俺の方こそ、板本君のほうが先に約束してたのに、…蒼を誘ってごめん」
頭を下げて謝罪すると、板本君は「う、ううん…っ」と首を横に振ってほっとしたような安堵の笑みを浮かべた。
「あの、あの…っ、それで、僕がこんなこと言える立場じゃないってわかってるんだけど…」
上目遣いでちらっとこっちを見て、言いづらそうに下を向く。
その様子に、「何?」と首を傾げた。
あの時はいきなりわけわからないことを言われて、それに威圧感が強くて、近づきたくないタイプだと思ったけど。
こうして謝りに来てくれたんなら、やっぱりいい子なんだろうな。
「…その、柊君と、友達になりたいなって」
「へ?」
想像もしなかった言葉に、目を瞬く。
けど、すぐに笑って頷いた。
嬉しい。
「うん。俺も、板本くんと友達になりたい」
板本君によると、
俺を見かけて追いかけてきたものの、話しかけるタイミングを見誤ってずっと後ろでオロオロしていたらしい。
怖いと思っていたものの正体と、その原因がわかって安心する。
(振り返ってよかった…)
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