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行為の後に
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しおりを挟む確かに、誰かに借りた漫画でそういうシーンがあったような気がする。
「こ、これからは気を付ける」
「…ていうかさ、前から思ってたけどお前、他人に何か言われたら結構文句言わずに従うよな」
例えば先生の雑用とか絶対に断らねーじゃん。と言われて、そうかな?と返せば力強く頷かれた。
特に苦痛だとか嫌だとか思ったことはなかった。
「…それって、なんか理由あったりするのか?」
「…りゆう」
ぽつりと言われた言葉を繰り返すように呟いてみる。
わからない。
首を傾げれば、無言になった俊介が顔を上げる。
「その、もし、俺が、」
たどたどしい言い方を不思議に思って、続きの言葉を待っていると。
「もういい。もう12時過ぎてるから寝るぞ」と怒ったような表情で布団をかぶってしまった。
今さっき、好きだとかキスとか言われてさすがに同じベッドに入るのは申し訳ないと思いながら、ど、どうしようと戸惑っていると「こっちで寝たいなら好きにしろ」とぐぐもった声が聞こえてきて、迷ったけどベッドに入らせてもらうことにした。
布団にもぐって、周りが静かになると、不意に今日のことを思い出してしまう。
「俊介」
「…んー?」
「…蒼に、俺は俊介の言うことばっかり聞き過ぎだって言われた」
俊介に言われたことにもつながっているような気がして、ぽつりと言葉にしてみる。
「…あー」
「それで”俺より、あいつを選ぶんだ”って言われた」
なんであの会話でそうなるのか、考えても考えてもわからない。
もしも俊介のことを好きって言ったらって言ったのがそんなにだめなことだった…?
「……俺、もう蒼とは仲良くできないのかな」
言葉を並べていくうちに、鮮明に今日のことを思い出してしまう。
まだ後孔もじんじん痛いし、腰も酷く痛む。
激痛ってわけでもないけど、動くたびに変な感じが残ってて顔が歪む。
今日何度目だって思うくらい、またじわじわと涙が滲んで声をおさえて泣いていると、俊介が振り返った。
暗闇の中で目が合う。
「あーあー、泣いてばっかだなお前」
「…っ、う、」
よしよしと頭を撫でてくれる俊介に手を伸ばして抱き付くと「だ、おま、もう」と変な声を漏らした俊介は、突き放すことなく俺を抱きしめてくれた。
――――――――
どうすれば、俺は赦してもらえるのか。
何を赦されたいのか、そんなことさえもうわからなかった。
ただ、もう一度彼と一緒にいたい。
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