手足を鎖で縛られる

和泉奏

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見えない糸の絡まり

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別にみられても、困ることじゃない…と思う。

抱き合っていたか、という問いに


「うん」


そう肯定して頷くと、また俊介が何故か複雑そうな表情をした。


「……本当にお前らすごいな」と小さく呟く俊介に、「…いや、わけがわからないんだけど」と返すと、机に頬杖をついて、ため息をつかれた。何故だ。


「昨日のアレって、いつもどっちからやんの?」

「……え、どっちだっけ」


俺からするときもあれば、蒼からするときもあったような…。

真剣に悩んでいると「いや、まぁそれはいいや。なんとなくどっちからってわかるし」と勝手に納得された上に流され、一生懸命考えていただけあってショックを受ける。


「真冬」


俊介が不意に真剣な表情をして、俺の名を呼ぶ。
その表情の変化につられるように、俺も顔を引き締めた。


「お前、一之瀬が自分のこと、そういう意味で好きじゃないと思ってるから、抱き合ったりするんだろ?」

「え、う、うん」


そりゃあ、蒼が俺のことをそういう恋愛感情で好きだって思ってたらあんなことできない。

普通に、友達同士だからできることだと思う。
ふ、と俊介が表情を緩めて俺の頬をつんと指でついてくる。


「それ、俺とでもできんの?」

「…え?」


そんな軽い調子で聞かれる質問に、もうわけがわからない。

蒼と出来るんだから、俊介ともできると思う…、けど。

そんなことを思って頷けば、彼は「そっか」と嬉しそうに頷いて、その様子に「…?」と首を傾げる。

不意に、俊介が表情を暗くして俺から顔を背けた。
声がいつもより低い。


「俺、昨日廊下に行ったとき、一之瀬と真冬が二人でいるの見つけてさ」

「…うん」

「声かけようとしたら、すっげぇ一之瀬に睨まれて、いきなりお前を抱きしめたんだよ」

「…え?」


眉を寄せて、思い出すのも嫌そうな顔でそんなことを吐き捨てるように呟くから。
思わず、間の抜けた声が口から漏れた。

睨み付けたって、蒼が俊介を?

戸惑っている俺の反応を気にもせずに、彼は言葉を並べていく。


「前から思ってたけど、一之瀬のお前に対する感情ってさ、普通じゃないと思う」

「え、ちょっと、待って、待って」


慌てて、その言葉を遮るように制止する。

心臓がばくばくと鼓動を速める。


(…なんで、いきなりそんな話になってるんだ?)


突然俊介の口から予想もしてなかった言葉が次々と並べてられて、頭が状況に追いつかない。

顔も真剣だし、冗談を言っているようにも見えないから、笑って返すこともできなくて。

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