209 / 784
俊介と、
10
しおりを挟む……
……………
意外に、蒼からは何も聞かれなかった。
怒ってたらどうしよう、嫌われてたらどうしようと不安だったけど、蒼はいつもと変わりなくて。
むしろ俺から「あの、昨日は…っ」と声を挙げれば、「うん、知ってる。青木ってやつと一緒に遊びに行ったんだっけ」と、思い出したように頷いて首を傾げていた。
「楽しかった?」と聞かれて「…う、ん…。たの、しかった」とちょっと、いや…結構、蒼の反応が怖くて恐る恐る頷けば、「なんでそんなに怯えてるの」と苦笑されて、そんな俺を安心させるようによしよしと頭を撫でてくれる。
「まーくんが嬉しそうでよかった」と優しく微笑んでくれる彼とその手に安心して、ほっと肩の力を抜いた。
……怖くない。怒ってなかった。
なんか、同級生なのに下の子どもにやるように頭を撫でてくるから、これって周りから見たらシュールというか、……恥ずかしい。
でも、頭を撫でられるのは嫌いじゃなくてむしろ好きだから、なんだかムズムズしてくすぐったい気持ちになった。
(……俺の思い過ごしだったのかも)
そうだ。
一日俺と帰らなかったくらいでそんなに怒るわけない。
蒼は、昼のあんなことで寂しくなってた俺とは違うんだから。
そうして、すっかり緊張の解けた俺は気が緩んで、聞かれるままにその後にあったことも事細かに蒼に話したのだった。
俊介の弟のこと。
俊介のお母さんのこと。
俊介の家でやったゲームのこと。
身振り手振りを含めてどれだけ楽しくて、すごい良い家庭だったかを表現すると、そっかと相槌を打って頷いてくれる。
そんないつも通りの蒼の反応に、俺も嬉しくなってへへ、と笑った。
…なんか予想以上に怯えすぎて、逆に申し訳なかったな。
「そしたら、そのゲームでさ」
「うん」
「…俊介が、って……ぁ、」
少し落ち込みながら、しばらくそうやって話していると俺の家の前についた。
家に寄っていくか聞こうとして振り返る。
……と、
「あ、蒼…?」
背中に回された腕に抱き締められて、驚く。
「そんなに昨日楽しかったんだ?」
「う、うん、」
戸惑って見上げれば、俺の頬を優しく撫で、彼は綺麗な微笑みを浮かべた。
それは、…いつか見た見惚れるような笑顔で、視線を奪われてしまう。
「まーくん」と呼びかけてくる彼に首を傾げた。
こんな風に家の前で抱きしめられたこともなかったから、余程何か言いたいことがあるんだろう。
…と、
「……っ、?」なんだろう。
わからないけど、何故か彼を怖いと感じて、無意識に足が後ろに下がった。
「痛…っ」
引き留めるように掴まれた手首に、痛みが走る。
「あの、どうし、」
「今日の夜、泊まってもいい?」
別に、その言葉自体は特におかしなことではないはずなのに。
変な汗が滲んで、すぐには返答ができなかった。
27
お気に入りに追加
1,078
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる