180 / 842
お世話
1
しおりを挟む名前を呼ばれた気がした。
焦りと心配の色を含んだ声に怠く重い瞼を持ち上げると、蒼が不安そうな表情でこっちを覗きこむようにしていた。
「…あお、い…?」
口から出る声が震えていることに気づいた。
喉の奥が、熱い。
気づけば…何かあったかいものがたくさん目から溢れてシーツを濡らしていた。
呆然とする。
「…え?」
(なんで、涙が…)
「悪い夢でも見た?」
安心させようとしてくれているのか、頭を撫でてくれる蒼に「だ、い、じょうぶ」と涙を拭いながら上半身を起こす。
身体の節々が痛い。
頭がぼーっとする。
彼の心配そうな表情に夢の内容を話そうとして…でも、「…なんの夢だっけ…」と呟く。
……どれだけ考えても、全く思い出せない。
そんなことよりも、
「…いてくれたんだ」
ずっと握ってくれていたらしい。
手が、あたたかい。
申し訳なさと、ありがたさで、返す言葉が変な感じになってしまう。
今日は蒼にお礼を言ってばかりだなと思って笑うと、彼も優しく安心したような笑みを零して「体調はどう?」と聞いた。
「…うん。さっきよりは大分マシになった」
まだちょっと怠いけど。
ふと辺りを見回して、時計を探す。
部屋が暗い。
ふいにその時計に示された数字が目に入って、思わず驚きに声を上げた。
(…午前、5時)
昨日家に送ってもらったのが、夕方頃だったから、半日はたったことになる。
「あ、蒼…っ、ごめん…っ」
そばにいてくれたから、結果的に家に縛り付けることになってしまった。
心配させた挙句に、迷惑をかけてしまった。
どうしよう。どうしよう。
バクバクと心臓が動いて、その申し訳なさに下げた頭を上げることができない。
「あの、家の人には…っ」
「大丈夫。なんとかしたから」
微笑んでそう言った蒼に「ほら、ベッドに戻って」と肩を優しく押されて、ふわふわの布団の上に横にされる。
「ご、ごめん…っ、本当に」
「いいよ。まーくんの方が大事だから」
前にも似たようなセリフを聞いたなと少し既視感を覚えつつ、もう一度謝る。
48
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる