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お世話
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しおりを挟む名前を呼ばれた気がした。
焦りと心配の色を含んだ声に怠く重い瞼を持ち上げると、蒼が不安そうな表情でこっちを覗きこむようにしていた。
「…あお、い…?」
口から出る声が震えていることに気づいた。
喉の奥が、熱い。
気づけば…何かあったかいものがたくさん目から溢れてシーツを濡らしていた。
呆然とする。
「…え?」
(なんで、涙が…)
「悪い夢でも見た?」
安心させようとしてくれているのか、頭を撫でてくれる蒼に「だ、い、じょうぶ」と涙を拭いながら上半身を起こす。
身体の節々が痛い。
頭がぼーっとする。
彼の心配そうな表情に夢の内容を話そうとして…でも、「…なんの夢だっけ…」と呟く。
……どれだけ考えても、全く思い出せない。
そんなことよりも、
「…いてくれたんだ」
ずっと握ってくれていたらしい。
手が、あたたかい。
申し訳なさと、ありがたさで、返す言葉が変な感じになってしまう。
今日は蒼にお礼を言ってばかりだなと思って笑うと、彼も優しく安心したような笑みを零して「体調はどう?」と聞いた。
「…うん。さっきよりは大分マシになった」
まだちょっと怠いけど。
ふと辺りを見回して、時計を探す。
部屋が暗い。
ふいにその時計に示された数字が目に入って、思わず驚きに声を上げた。
(…午前、5時)
昨日家に送ってもらったのが、夕方頃だったから、半日はたったことになる。
「あ、蒼…っ、ごめん…っ」
そばにいてくれたから、結果的に家に縛り付けることになってしまった。
心配させた挙句に、迷惑をかけてしまった。
どうしよう。どうしよう。
バクバクと心臓が動いて、その申し訳なさに下げた頭を上げることができない。
「あの、家の人には…っ」
「大丈夫。なんとかしたから」
微笑んでそう言った蒼に「ほら、ベッドに戻って」と肩を優しく押されて、ふわふわの布団の上に横にされる。
「ご、ごめん…っ、本当に」
「いいよ。まーくんの方が大事だから」
前にも似たようなセリフを聞いたなと少し既視感を覚えつつ、もう一度謝る。
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