手足を鎖で縛られる

和泉奏

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テスト

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***

そろそろ受験も間近になった12月の半ば。
数学のテストが返却された。


「えー、平均点は62点ですが、このクラスの最高得点は99点です。皆もっと勉強しないとやばいぞー」


担任の声に、「えー」「無理だろー」「いやこのテストで99は無理だよねー」なんてぶーぶーと不満の声や、諦めの声が聞こえて担任がその声にまた厳しくしかる。


「…(うわ、82点…)」


自分的にはもうちょっと取れてたと思ってただけにショックを受けて、…でも平均点を超えてるからマシだと考えようと気を取り直す。


得意な数学で点数を取らないと、本気でやばい。
社会が苦手で、大抵70点とれるか怪しいから、自分の行きたい高校を目指すなら少なくとも全科目平均で80点以上は取らないといけないと考えるとこれは危ない。


…内申点が低いから余計に頑張らないと。
毎日毎日勉強してたんだけど、やっぱり応用問題に弱い…。
とほほと肩を落としながら、視線を前に向ける。

…すると、蒼がすごく複雑な顔で、何故か血の気が引いたような表情でテスト用紙を見ていて。


「…え」


ぐしゃりと紙を握り潰した。
その行動に呆気に取られて、呆然と見てしまう。


(…余程酷かったのかな)


少し心配になって、でも声はかけ辛かったのでその時は何も話しかけることができなかった。






……そして、現在昼ご飯中。



「なー、蒼だったんだろ?最高得点」


開幕一番に、率直にそんなことを言う依人に焦って「え、な…っ、」いきなりなに言ってんのと言おうとして、その言葉を肯定するように静かに頷く蒼に、また驚いて絶句する。
そして、自分のことじゃないのに、蒼の点数が悪くない…むしろ良すぎることにほっとして息を吐いた。


(そっか。99点だったんだ…)


確かに蒼はいつも成績一番だし、おれが心配するなんてそれこそおこがましかったかもしれない。
……じゃあ、別に落ち込んでるわけじゃないのかな。
でも、いつもよりなんか元気ない…というか表情が暗いように見えるんだけど。
…だったらあの行動はなんだったのかと気になって、もぐもぐ咀嚼しようとしていたオムレツをあまり噛まずに飲み込んだ。疑問を投げかけてみる。


「蒼って、やっぱりすごく偏差値高い高校目指してるんだ」

「…なんで?」


なんでと聞かれて、「う、」あの光景を見たと言っていいのか悪いのか一瞬迷う。
でも結局そのじっとおれを見る瞳に、観念して見たままを話すことにした。


「解答用紙を見てる時の顔が…悔しそうに見えた…から」


なんかおれストーカーみたいだな…と一方的に見ていたことを後悔して謝ると、彼は視線を逸らして目を伏せた。
焦りを滲ませた表情をして、一瞬その瞳に暗い影が走ったように見えた。


「……?」


首を傾げると、ふ、と表情を緩めた彼が「気になる?」というので「うん」と頷く。
…なぜだろう。なんか蒼がすごいイイ笑顔を浮かべている。

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