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修学旅行
25
しおりを挟む口を離した蒼がふわりと甘い笑みを零して囁く。
「声、出すと皆起きちゃうよ?」
肩で息をしながら、その声に「ぁ…っ」と今自分がどこにいるか思い出して慌てる。
でも、周りを確認する暇もなく、すぐに押し付けられる唇。
「…っ、ん…っ、…ふ、ぁ…っ」
(一回だけって言ったのに…!)
愕然として、離れようとしても唇を塞がれているせいで蒼には伝わらない。
声を出しちゃいけないってわかってても、舌を激しく絡められて、そんなことに気を遣う余裕なんかない。
こんなことしてるってばれたら蒼だって困るのに、むしろ音を立てることで楽しんでいるように感じる。
寝息と寝返り、他は微かな身動きくらいしかしてないだろう部屋。
…なのに、おれは今、手を繋ぎながら蒼に押し倒された状態で、…なんていうか…、すごくえっちなキスをされてて、
(…っ、皆が起きたら、どうしよう…)
そんな焦りと不安が湧き上がって、必死に繋がれたままの手を解こうとする。
ばれない程度に、とその余計な思考のせいで脚が中途半端に動く。
慣れているように動く舌が、口内で暴れる。
「…は…っ、ぁ…っ」
クチュ、くちゅ、と絡まる度に鳴る卑猥な音。
テレビでよく見るような、大人なキスを自分がいましているということが理解できなかった。
できるだけ頑張って抑えてはいるものの、自分が出している声はまるでテレビの女の人のように翻弄されるだけのもので。
「…や、だ…っ、」
一瞬息づぎのために離れた瞬間に涙を零して抗議する。
けど、その言葉さえ飲みこむように重なる唇と嬲る舌に音は消えていった。
嫌がれば嫌がるほど、キスは深く甘くなる。
友達とキスしてるのに、あんまりにも蒼のやりかたがうまくて、自然に下半身に熱が集まっていく。
(……これで反応してたら、変態みたい、で、…嫌だ……)
なんて思ってたら、ふいに股間あたりに何か硬いものが当たっている感触がして、それが何か把握して青ざめる。
勃って、る…?
蒼も興奮してるんだと知った瞬間、首が、頬が勢いよく熱くなっていって反射的にせめてその感触から逃れようとするけど、やっぱり離れられない。
絡められる舌と、おれの勃起した場所近くに擦れる膨らみ。
ああ、もう。自分も蒼にあたってるかも、なんて考えたくなかった。
「…っ、はぁ…っ」
しばらくたって、意識を失いそうになった時にようやく唇が離れた。
お互いの口をつなぐように一瞬できた唾液の糸がシーツを濡らす。
息も絶え絶えになって、焦りと性的な興奮で涙が零れた。
ああ、もう。勃った。絶対勃った。
なんで勃ってんだよ、おれ。
それに全く声がおさえられなかったし、ばれてたらどうしようと心配になって。
…けど、もうそんなことどうでもよくなるほど頭の中が混乱している。
幸いにも今は誰も起きてないようで、おれと蒼の声以外には穏やかな呼吸の音しかしない空間に安心する。
全力で呼吸をしているおれと全然違う。
あれだけ濃厚な口づけをした後でも余裕そうな蒼を見上げて、涙目で睨む。
「………ッ、あおいの、ばか…。ひどい」
一回だけって言ったのに。
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