手足を鎖で縛られる

和泉奏

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修学旅行

22

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おれがここで素直に受け入れればいいのか?

「いいよ」っていえば、少しは空気がマシになるのだろうかと本気で悩み始めた時。


「……俺のこと嫌いになった?」


ぽつりと呟かれる言葉に、背を向けたままぶんぶんと勢いよく首を振る。
嫌いになるわけない。
蒼のことは、好きで、大好きだからこうやって普段から一緒にいるんだ。


「嫌いになんて、ならない」

「…まーくんは、やっぱり優しいな」


そう呟けば、苦笑を含んだ声が聞こえる。
でも、どこか自嘲気味な声で。
そんな言い方をされると、思わず頷いてしまいそうになる。

ふ、と笑みを零す気配と、その優しい声に罪悪感でどんどん辛くなってくる。苦しくなってくる。

本当に優しかったら、好きな相手のどんな要求も受け入れられるはずだ。

受け入れられないおれは、優しくなんかない。
ぎゅっと掛け布団を握って、どくどくと鼓動が変に脈打つ。



「…俺、寝るから。ごめん、変なこと言って」

「…っ、」


沈んだ声と、ごそごそと動く音。
もしかして、おれが今日拒んだら、明日からまた変にぎくしゃくしてしまうのだろうか。
蒼と、今まで通りに一緒にいれなくなるのだろうか。


「…(そんなの、嫌だ)」


おれは、蒼に嫌われてしまったら、きっとすごく心が痛くなる。
辛くなる。
そんなの、嫌だ。

そう思うと、自然と身体が動いていた。


「…え」

「あ…、の、」


気づいたら、振り返ってその服を掴んでいた。

唖然とした声を漏らす蒼に、ああおれは何をしてるんだろうと焦って、でも一度掴んでしまったら何か理由を言わないといけないわけで。

なんて言おうと考える暇もなく、確認するように問う。


「本当に、キスじゃないと、だめ?」

「……………」


返事はない。
それは、ある意味肯定を示している…と考えて間違いない気がする。

できれば、他の方法が一番よかった、んだけど。

震える手で蒼の服を握りしめて、もういいやと思う。
キスぐらいなんだと、あの時、思ったじゃないか。
だったら、今だって別にキスぐらいどうってことないはずだ。

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