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女子に協力
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しおりを挟む「真冬―、ちょっと来て」
「えー…」
紫苑のちょっとはちょっとじゃないんだよなぁ。
野菜サラダを口に含みながら、不満気に見ていると「遅い」みたいな非難の視線が向けられる。
横暴だ。
仕方ない、とため息を吐きながら立ち上がると。
「誰?」
ぽつりと蒼くんが紫苑の方に顔を向けて、低く呟いた。
その綺麗な顔は、何を考えているか分からないほど、無表情で。
無表情だと蒼くんは綺麗すぎるから、人間じゃないようにも見えてくる。
「え?!真冬ってば、あの子と付き合ってんのー?」
それに対し、ノリノリでわくわくと目を輝かせておれをみてくる依人。
相変わらず正反対の反応をする二人だなと思う。
でも変な紹介でもしたら、それこそ紫苑に怒られるので息を吐き、ここはアピールどころだろうと紫苑を手招きして呼び寄せた。
「えっと、鈴村紫苑さんで…、……最近仲良くなったんだ」
隣に立つ紫苑を紹介する。
無言の紫苑の圧力で、余計なことは一切言えない。
「鈴村紫苑です。真冬にはいつも優しくしてもらってます」
可愛いらしい女の子とでも表現できそうな程優しい声と穏やかな微笑み。
いつもみたいな横暴な感じじゃなくて、ちゃんとお淑やかにできてる。
…女子って怖いな。
それにしても、
「優しく、か…」
あの奴隷のような扱いを、優しいとこうも簡単で違うイメージに変えることができるとは。
ふ、と自嘲気味にそう呟いて笑ってみれば、紫苑が「何か言った?」なんて、笑顔のまま小さく呟くから、すぐにごめんと謝った。どうやら機嫌を直してくれたようで安心する。
「真冬には紫苑って呼んでもらってるから、二人もそう呼んでね」
にこり、と効果音がつきそうな笑顔で彼女は笑う。
依人は嬉しそうに「よろしくー、紫苑ちゃん」と答えていて、これなら悪い印象を与えることはないだろう、とほっと息を吐いた。
「……”紫苑”、”真冬”…」
顔から血の気が引いているようにも見える。
蒼くんが低い声音で何かを呟いて、でもその声は小さすぎて聞き取れなかった。
「…いつの間にか、随分と仲良くなったんだ」
俯き加減だった顔を上げて、蒼くんがおれに向かって笑顔を向ける。
ふ、と微笑む彼の瞳が笑っていないように見えるのは何故だろう。
「ん…?うーん…どうだろ…?ちょっとは仲良くなった、かな…?」
言葉を若干濁す。
仲良くなったというよりは、蒼くんにアピールするために仲良くならされたというか。
あはは、と笑いを零すと、彼はふわりと子供のような笑顔を浮かべた。
…珍しい、というか初めて見た。
その、またいつもと違った零れるような子供らしさを残した笑顔に、おれも紫苑も惹きつけられるようにその表情に見惚れる。
紫苑は顔が赤くなってた。
「ふーん。…俺も、興味が湧いた」
そんな言葉をさらりと零して、蒼くんは立ち上がって、紫苑に笑いかけた。
滅多に女子に友好的な態度を示さない蒼くんが笑いかけるから、教室中が騒めいている。
「…俺と、仲良くしてくれると嬉しいな」
その日から、おれが想像する以上に、急スピードで二人の関係は進んでいったように思う。
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