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…ただ、傍にいたかった。
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しおりを挟む…と、不意に視界がくらんで、身体から力が抜けそうになった。
(……え、…?)
「返事はわかってる。…俺が、まーくんに伝えたかっただけだから」
「…なん、…で…」
「…それと、1つだけ…俺からのお願い。…もう二度と、何があってもこの屋敷には絶対に来ないで」
言わなくても来たくもないだろうけど、と自嘲気味に笑う声が聞こえる。
「……ッ」
なんでそこまで、と胸が苦しくなる。
これじゃ、一方的に言われっぱなしのまま終わってしまう。
「――っ、ぁ、」
(いやだ、そんなの、嫌だ――)
心が叫ぶ。
嫌だと、そんなこと言わないでくれと声にならない声で叫ぶ。
けど、それすらも声にできないほど何故か不明瞭な意識に困惑する。
…身を離し、…空になった容器に視線を移す蒼に、確信に変わった。
(もしかして、さっきの紅茶に…何か、…)
絡めた指の感触だけが、そこから伝わってくる体温だけが、これは現実なのだと俺に告げてくる。
……繋いだ手を、離したくない。
ここで目を閉じてしまったら。
ここで眠ってしまったら、もうこの先二度と会えないような気がして、
「俺、は…ッ、」
自分でも、何を言おうとしたのかわからない。
でも、何かを伝えたくて。
このまま離れるのは、どうしても嫌で。
考えるよりも先に声を出していた。
「…ッ、おれ、は……」
(……だめだ)
だるくて、唇が動かない。
視界がかすむ。
意識が遠くなる。
瞼が重くなる。
完全に身体から力が抜ける前、
俺を見つめる蒼の顔が見えた。
「まーくん、」
「…―――――っ」
(なんで、そんな顔…)
「…ばいばい」
そう呟く彼の声に
結局何かを伝えることもできず、泥のような眠りに押し流されて
……意識を 失ってしまった。
―――――――
(嗚呼、)
(目を閉じてしまった)
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