手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
110 / 842
…ただ、傍にいたかった。

6

しおりを挟む




「ぁ…あお、い…?」


なんで、そこまで。
首をふるふると横に振ると、それほど緊張していたのか強張っていた表情を緩めた彼は慰めるように俺の頬を撫でる。その気遣うような触れ方に、一瞬目をつぶった。


「…ごめん。怖がらせた」

「……」


抱きしめられて、髪を優しく撫でられれば、少し和らいだ空気にほっと息を吐いた。
怖かった。
蒼の冷たい目が、声が、いつもと全く違って…怖かった。
身体が震える。目を瞑っていると、心底申し訳なさそうに「ごめん」と呟く声。


「…でも本当に俺が脱がないのは、そういうのじゃないから。安心して」

「……うん」


納得はできなかったけど、一応頷いておく。
顔を上げれば、優しく微笑まれて何も言えなくなる。


(…そうだ。何があったかなんて、元々俺が無理に聞いていい話じゃない)


そう自分を納得させて、手を引かれるままに浴場に足を踏み入れた。
促されてそこにあった椅子に座ると、最初に手にかけて温度を確かめてから俺の上に温かいシャワーをかけてくる。


「…わ、ぷ」


口と目を閉じて水が入らないようにしていれば、可笑しそうに笑った蒼がシャンプーで髪を洗ってくれる。

ごしごし。

頭皮に触れる指の感触。
泡立つ泡が髪にまとわりつく感覚。
案外人に頭を洗ってもらうという感覚は気持ちよくて、くすぐったい気持ちになった。

…まあ、それでも友達に洗ってもらうなんてやっぱり変な感じはするけど。


「…わ、」


気のせいか、いつもの倍くらいのシャンプーが顔に垂れてくる。
う、なんかすごく多い。
どろりと流れてきた泡が口に入って苦い。


「…はは…っ、苦しそう」

「あ、…ッ、う…」


わざとだったらしい。
文句をいいかけてすぐに口を噤んだ。

だめだ。今、口を開いたら大変な量のシャンプーが入ってくる。
楽しげな声で笑う蒼に、むっと眉を寄せる。
なんだろう。今日の蒼はいつもより、よく笑う。


「流すよ」


そんな声がして上からお湯が降ってきて、泡が流れていくのがわかる。
キュッと蛇口を締める音がして、シャ―ッとお湯の流れる音が消えた。

終わった、…のかな。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

BL短編まとめ(現) ②

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

処理中です...