89 / 842
何も見なかったふりをする。
2
しおりを挟む「…っぁ…っ」
身体に力が入らない。
かくんと膝が折れて、床に転びそうになる身体に驚く。
なんで…?
ふらふらと歩き出して、視線を彷徨わせた。
ふと、扉から零れてくる光に気づいて、そこに歩みを進める。
まぶしい。
外の様子が全くといっていいほどわからないこの部屋では、どうにも落ち着けないから。
とりあえず、誰かがいる方向にいきたくて。
さっき見た、悪い夢を誰かに会うことで、本当に夢だったんだと安心したくて。
鎖の抵抗にも構わず、歩みを進める。
「…だれか、」
そう声を零して、その隙間から外をのぞき込む。
遠いけど、そこから人がいるのが見えた。
それが、求めていた人の姿で、胸に広がる安堵感にほっと息を零す。
よかった。いた。
「あお――、」
蒼の名を呼ぼうとして、気づく。
そこにいるのが、蒼だけではないことに。
「…ッ、んっ、あお…、ぃ…っ、」
「……………」
時折見える妖艶に絡まる舌と、お互いを抱き合う様な光景に、息を呑んだ。
(…なに、これ)
「…え」
蒼と、誰かが
……キスをしていた。
40
お気に入りに追加
1,139
あなたにおすすめの小説


「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる