89 / 602
何も見なかったふりをする。
2
しおりを挟む「…っぁ…っ」
身体に力が入らない。
かくんと膝が折れて、床に転びそうになる身体に驚く。
なんで…?
ふらふらと歩き出して、視線を彷徨わせた。
ふと、扉から零れてくる光に気づいて、そこに歩みを進める。
まぶしい。
外の様子が全くといっていいほどわからないこの部屋では、どうにも落ち着けないから。
とりあえず、誰かがいる方向にいきたくて。
さっき見た、悪い夢を誰かに会うことで、本当に夢だったんだと安心したくて。
鎖の抵抗にも構わず、歩みを進める。
「…だれか、」
そう声を零して、その隙間から外をのぞき込む。
遠いけど、そこから人がいるのが見えた。
それが、求めていた人の姿で、胸に広がる安堵感にほっと息を零す。
よかった。いた。
「あお――、」
蒼の名を呼ぼうとして、気づく。
そこにいるのが、蒼だけではないことに。
「…ッ、んっ、あお…、ぃ…っ、」
「……………」
時折見える妖艶に絡まる舌と、お互いを抱き合う様な光景に、息を呑んだ。
(…なに、これ)
「…え」
蒼と、誰かが
……キスをしていた。
応援ありがとうございます!
28
お気に入りに追加
907
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる