手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
上 下
7 / 842
彼は籠の中の鳥

6

しおりを挟む



「…っ、なんで、そんなやつ…っ」

「は?」

「――…っ」


男子生徒の息をのむ音。
蒼の顔を見上げると、憎悪と侮蔑の混じった殺気を孕んだ視線で男子生徒を見ていて。
自分に向けられてるわけじゃないのに、全身から血の気がなくなるのを感じる。

(――…やばい)

これ以上怒らすと何をするかわからない。
過去にそれで病院送りにされた人を思い出して、体中の血液が逆流しているような感覚を覚える。
蒼の制服をぎゅっと掴んで、上目遣いで見上げて、震える口を必死に動かした。
自分にできるだけの精一杯の甘え方。


「あ、蒼、早く行こう。学校、案内してくれるんだろ」

「……随分可愛いおねだりができるようになったな。」


ふ、と冷たい表情をやわらかくして微笑む蒼によしよしと頭を撫でられる。
自分は間違えなかったのだと、その表情によかった、とほっと安堵の息を吐いた。
やっとこの場を離れられると、蒼の手を引っ張って校舎に向かおうとしたとき。

「真冬」

珍しく愛称ではなく名前を呼ばれて若干驚きながら振り返ると、蒼の顔がすぐ近くにあって。
声を出す間もなく、唇をふさがれた。
身体から血の気が引く。


(学校で、しかも校舎前で、こんなことするか普通――ッ)


家の中でだったら、抵抗もせずに受け入れることができる。
…けど、まさか蒼が学校でこんなことをするとは予想外だった。
反射的に胸を押し返そうとして、手首を掴まれた。
にゅるりと唇を割って入ってきた冷たいそれに、抵抗する間もなく舌を絡め取られる。


「あお…っ、い、やだ……っ、ぁ…っ」

「…ん、」

「…っ、ふぁ…っ、ぁ…ッ、は…っ」


時折開く口の間から酸素を取り入れる。唾液が零れた。ゾクゾクと腰が震えて、膝が崩れる。
唾液を舐めとった彼は地面に座り込んだ俺を見下ろして、にやりと妖艶な笑みで微笑んだ。


「続きは家でな」


行きたくて、行きたくてやっと来ることができた学校の前で。
……自分は何をしているのだろう。

―――――――

こっちを見る様々な感情のこもった視線に無性に泣きたくなった。
泣いたって、誰も助けてはくれないけれど。

しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

「じゃあ、別れるか」

万年青二三歳
BL
 三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。  期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。  ケンカップル好きへ捧げます。  ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

処理中です...