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湊side

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***


僕の恋人はとてもとても繊細で、弱くて、なのに誰よりも一生懸命に生きる人だ。


「…っ、う、うう…っ、みな、と…っ、」

「うん。よく頑張ったね」


腕からぽたりぽたりと血を流す春翔を、抱き締める。

今日の仕事で足を引っ張ってしまったと、泣いている。

『他の人に比べてうまく仕事ができない。
人の役に立てない。
やることが遅い。
仕事をしているように見せかけて、実際の結果として大した成果が生まれてない。
客に怒鳴られた。みんなは理不尽な人だったと言ってくれるけど、俺が何かしてしまったのかもしれない。
何度説明しても一度はわかったふりをして、すぐになかったことにされる。

のろま。クズ。出来損ない。欠陥品。』


「おれ、どうして、こんな…っ、」


毎日春翔は何かにつけ自分を責め、腕や太腿を剃刀で刺すか、首を絞めるか、あらゆる手段で自傷する。

その原因が自分の責任ではなく、他の誰かが犯した過ちだとしても、受けた感情の逃がし方を、消化の仕方を知らず自傷しようとするのだ。

……それほど辛いなら、実際に罪があるのが自分だとしても、全て相手に非があることにして何も自分は悪くないのだと自分自身を甘やかせばいい。

けど、春翔は言われた側の負担を考え、全部全部自分へとその怒りや悲しみを身体を刺すことで解消しようとする。

全て自分がふがいないせいだと、矛先を外部に向けず、自分のせいだと考えてしまう。


「…(全部、適当に流してしまえば楽になれるのに)」


嘆息する。
心配になる。

それと同じぐらい、尊いとも思う。

これほどまでに真面目に生きて、傷ついて、涙を流して懸命に生きる存在を、他の誰よりも人間らしいと思う。
ああ、純粋で、無垢で、愛しい。


「ほら、止血しよう。手当して、保護しないと」


泣きじゃくって更に剃刀で傷つけようとする春翔を抱き締めて止めた俺に、目にいっぱいの涙を浮かべた恋人は「まだ、足りない」と自罰的な言葉を零した。



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