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六話、【合コン】(流羽ver)
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しおりを挟む薄暗い街灯の近く。
車に軽く寄りかかるようにして、静かに俺を見据える彼に、…動揺、した。
一瞬夢かと思った。
けど、…優さんを間違えるはずがない。
うれしい。
やっと会えた。
でも、
(…いつから、見られてた…?)
それに、どうして声をかけてくれなかったんだろう。
もしかして
さっき、キスしようとしてたのも、見て、
「…な、なん、」
「他の人に聞いたら、ここにいるって聞いたから」
何とも思っていないような態度、普段通りの落ち着いた仕草で近づいてくる。
彼の美しい静かな瞳は、決して俺を責めているわけではない。
なのに、身を震わすほど冷たく感じて、…底知れない恐怖に、動けなくなった。
「ゆ、…ゆうさ、」
そっちに歩こうとして、「…っ、わ、」ふらっと足がつんのめったところを、抱き留められる。
ただ転ばないようにしてくれただけだけど、大好きな優さんの腕の中に包まれ、胸がいっぱいになった。
「何してたの?」
「……っ、ぁ、」
そっと、頬に触れる手。
言葉上では気遣うようなそぶりを見せながらも、氷のように冷たい指先に想像以上に彼が怒っているのだとわかる。
「呂律も回ってないし、顔も真っ赤になってるけど」
「っ、ぅ、」
自覚しているほどに酔っているから、指摘されて怯む。
言い訳さえ思いつかない。
「ぁ、の…っ、ご、ごめ」
「流羽は酒に弱いんだから、外で飲んじゃだめって言わなかった?」
少し窘めるような口調に、びくっとする。
謝ろうとし、何度も謝罪のために口を開くが音がうまく出ない。
最終的にじわりと浮かんだ涙に視界が見えなくなってきた。
そんな俺を見下ろし、優さんが溜息を吐く。
その反応に尚更萎縮すれば「…心配してただけだから。怒ってないよ」と否定し、瞼を伏せる。
「ほんとに、怒ってない…?」
「うん」
恐る恐る窺えば、嘘ついてどうするの、と苦笑された。
頭を撫でる手が優しくて、自然と身体から力が抜ける。
驚くぐらいに安堵し、幸福感が滲む。
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