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六話、【合コン】(流羽ver)
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しおりを挟む……こんなに飲んだのはいつぶりだろう。
もしかしたら短時間で飲んだ量としては初めてかもしれない。
首も頬も熱くて、頭がくらくらぼんやりしてきた。
「あのね、美紀って呼んでほしい」
「美紀?」
言われるままに繰り返せば、こくりと上機嫌に頷く。
白い肌が真っ赤になっていて、ああまるで白雪姫の童話に出てくるリンゴみたいだと、酔いきっている頭で考えた。
それにいつの間にか距離が滅茶苦茶近い。
好きなタイプとか、なんか色々聞かれた気がするけど、ところどころ記憶が飛んでいてよくわからない。
…けど、色々と話していくうちに、想像していたより大分話しやすい雰囲気で安心する。
酔っているのもあってか、俺自身も普段より距離感とか、気が緩んでいったのを感じた。
自分より背格好の小さい、身体。
女の子らしい服装と、長い髪。
嗅ぎなれない、少しきつい香水の匂い。
……全ての要素を、ここにいない別の人と比べていることをなんとなく寂しく思った。
「流羽君の手綺麗~~、わ、指も長ーい」
「んー、」
手の大きさ比べみたいに、重ねられる掌。
それを見て、ああ確かにと納得する。
彼女の方が俺より小さい。
感触も、全てが女の子のものだった。
「ラインも教えてほしいな」
「あ…俺、携帯持ってない、から」
ぼーっとしたまま、首を横に振る。
「え、なんで、」と驚いた顔をする美紀に、「持っちゃいけないんだ」と答えると、更にその顔に浮かぶ疑問符は濃くなる。
まぁそうだよな説明しないとわからないよなとアルコールで干上がった喉は動く。
「それが付き合う条件だから」
「え…?」
「…優さ、んとの約束、で」
眠い。
とろんとした瞼が、おりてきそうになる。
こんなとこで寝ちゃだめだ、とかろうじで残った義務感が口を滑らせた。
「あの人と、一緒にいるために…必要なことで、今日も、今…約束、破ってて、」
……そうだ。
飲み会も本当は来ちゃだめなはずだった。
でも、どうでもいいやって、たまにはこれくらいしても大丈夫だろうって思ってしまったところもあった。
だって、優さんも俺に酷いことをする。
嫌なことをさせる。
……それに、きっと、優さんは俺のことなんて気にしない。
どうでもいいと思ってる。
きっと、そう思ってるから、
「…ゆうさんが、わるいんだ…、うー…ねむ…」
「あはは、るうくんかわいー」
舌も回らないし、目の前もぐらぐらする。
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