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五話、【昔の友達】(流羽ver)

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高校生の時、俺と流羽は友達だった。
目つきが悪い、素行が悪い、態度が悪いと周りから疎まれて距離を置かれていた俺を嫌うことなく話しかけて、…俺の目つきが悪いことも、格好いいと言ってくれた。

友達でいようと思った。
流羽が俺のことをそれ以上に思っていないのはわかっていたから。

でも、…そのままでいられなくなった。
高校生だ。もう子どもじゃない。

今は興味なくても、いつ異性と付き合うと言い出すかわからない。
卒業が近づくにつれて、焦った。
このままじゃ、本当にずっと変わらない。

いつか流羽は誰かと付き合って、結婚するんだろう。
…俺は、ずっとそれを傍で見ていくだけなのか。

違う。

(……流羽の良さを一番にわかっているのは、幸せにしてやれるのは俺だけだ。俺だけなんだ)

楽しそうに見えた。俺と過ごしている流羽は、他の誰といるより気楽で、素でいられているように見えた。

だから、

どうしても、と流羽にお願いして一週間だけ付き合ってもらった。
デートもしたし、キスもした。でも突然すぎたのか、泣かせてしまった。

その次の日、”好きだとは言われたが、どうしても友達としてしか思えない”と言われた。勿論納得はできなかった。したくなかったという方が正しいだろう。

…でも、今はまだ俺たちは精神的にも未熟だ。流羽は好きな女もいないらしいし、恋愛にも疎い。

だからいまは仕方ない。流羽が自覚してないだけで、きっと俺のことが好きなんだと気づく出来事があるだろう。

そう思って諦めた。

…否、諦めようとしてた。

が、


(…なんだよ、その顔は…っ、)


俺を見上げる流羽の顔が、恐怖と嫌悪に満ちていた。


「…優、さん…っ、」


目いっぱいに涙を溜め、救いを求めるように手を伸ばす。

……俺から顔を逸らし…切なげで苦しそうに、心の底から愛しいと
見た誰にでもわかる表情を、瞳を『あの男』に向ける。

二人が同棲しているらしい部屋で。
何度も使ったらしいベッドの上で。

ムカつく。ムカつく。ムカつく。

俺がここにいるのに。
それを拒むような態度をとる流羽にも、どうでもいいもののように扱うあいつにも。


「優さんじゃねえよ。正樹、って呼べ」


自分の方を向かせるためにキスをする。

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