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五話、【昔の友達】(流羽ver)
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今日は日曜日。
久しぶりに、優さんの仕事がない休日だった。
…だから、
「優さん優さん…!ほら、こっち!」
「待って。そんなに急がなくても、店は逃げないよ」
クスクスと笑う優さんの笑顔に見惚れつつ、手を引いて商店街を歩く。
長身ですらっとしてて更に格好いい優さんは、こうして一緒に歩いてると、必ず誰かに声をかけられたり、注目されたりする。
普段はそれが嫌で、ほとんどお家デートしかしてなかった。
(……本当は今日も、いつもみたいに家でゆっくりほんわか過ごしても良かったんだけど、)
…優さんに「どこか行きたい場所ある?流羽と久々にデートしたいな」なんて、最高級の笑顔つきで頭を撫でながら言われてしまっては、もう我慢できなかった。
遊園地っていうのもいいなって思ったけど、待ち時間は列に並ばないといけないし、その時にもし女の人達に話しかけられたら逃げ場がないし、
そんな女の人達と話す優さんも見たくないし、…すごく胸が苦しくなるから、やめた。
「これ、この服優さんに似合いそう!!」
「…んー、ちょっと派手じゃないかな」
「格好いいのに、いつもシンプルなのばっかじゃん。もったいないよ…!俺、優さんがこれ着てるの見てみたい!」
「まぁ…流羽がそこまで言うなら、一着くらいあってもいいか」
「うん!」
とか、
「クレープ!あのクレープ屋さんで一緒に食べよう!」
「はは、ほんと、流羽は甘いもの大好きだね」
「うん!食べ合いっこしたい!」
とか、
「優さん、喫茶店でコーヒー飲んでるの、…似合いすぎてやばい…格好いい…」
「…流羽もメロンソーダ飲んでる姿、滅茶苦茶可愛いよ」
「っ、」
「子どもみたい」
「ッ、そ、それ褒めてない!」
とか、
すべてのやりとりが楽しくて、どきどきして、嬉しくて、
本当に恋人同士がするデートみたいだった。
陽が暮れて、周りがオレンジ色に染まってきても胸のどきどきは静まることを知らなかった。
(…あ、あの店行ってみたい…っ)
「ねぇ、優さん」
少し向こうにある、なんだかおしゃれなお店。
わくわくしながら、まるで小学生の遠足みたいにはしゃぎながら隣を見上げる。
「次はあっちに行きた――」
…………そこまで言いかけた
その時、
「お前…っ、もしかして流羽…、か…?」
「っ、」
不意に、そんな声と同時に腕を掴まれた。
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