VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
上 下
227 / 228
本編

第214話 アイは推進していた。

しおりを挟む
「マッデン……だよな?」

ジキムートの言葉に一同がうなずく。


「くっ……」

レキは抱えていた物を離し、なんとか立とうとしていた。

「くくっ、ノーティス。おぬしが言う事は本当だったみたいだの。このレキだったか? わしでもなかなか見たことが無い、美しい女がいると」

舌なめずり一つ。

その直後に突然、地面から沸き上がった水の群れがレキを絡めとっていく。

「グゥっ!?」

水に周りをまかれ、レキがうなる。

周りは水。

逃げ場がなく、ゆっくりと狭まる包囲網をにらみつける事しかできないでいた。


「ほぅほぅなんぞ、その奇麗な褐色の肌は。 貴族共は全員が色白いからのぉ。こういう趣向は稀じゃ。いや、初めてじゃぁっ! ヒヒッ。どうして今までココに来んだったか、全くっ。神もいじらしい事をしてくださるっ!」

「……シュっ!」

その時だった。

〝ムードブレイカー(自己中)″ジキムートが走った。

壁を蹴ってつたい、一気に住民たちを横目に後ろに回ろうとする。

「……」

その姿をマッデンが睨んだ――瞬間。


バキンっ!


「何っ!?」

壁にあった壁面が一気に、突如氷に代わる。

「だがこれなら!」

未だ遠い住民の裏。

ジキムートは剣を壁に刺し、その氷を逃げきっ……。

パキパキパキッ!

剣がへし折れたっ!

一瞬にして氷が剣に浸食し、芯まで凍らせたのだ。

ジキムートは住民の中へと落ちてしまうっ!


「はっ!?」

いきなりの現実。

ゴディンの力ならば通用した事が、通じない。

その事実にジキムートは声すら出せないでいる。

ドタンっ!

そして、地面の感覚。

「クッ!?」


「全員気を抜くなっ! 行くぞっ」

叫び、漆黒のローラが駆けて……っ!

「……」

彼女が動こうとすると目の前に、20……30、いや40っ!

氷の刃が突然、出現した。

「なっ!?」

詠唱なしに、とんでもない量のマナが溢れる。

それはまるで壁のような、視界を埋め尽くす程の氷の刃。

狭い空洞に逃げ道はない。

(クソっ!? 呪いを使うしかないのか……。だが……っ)

ちらりとノーティスを見たローラ。


(コイツを信じるなんてシャクだが、この呪いは今使う訳にはいかないっ! この作戦、どんな犠牲を払ってでも遂行してみせるっ! お嬢様っ。お嬢様ーっ!)

彼女は賭けに出た。

愛する者の名を、心の中で叫びながら……。

「グアァァッ!?」

「そは水を食うモノなり。吸えよ食えよ肥え太れ……っ」

ノーティスは呪文を詠唱し始める。

「〝ディセクレト(神話、そして咎人)〟……か、〝アーク・エンクレイヴライト(聖域現出)〟っ。消えよこの、神の盟約を破る愚か者がっ! 目に入れるにも汚らわしいわっ」

水の聖域の現出。

その瞬間また、この世界が水で覆われてしまうっ!

そしてノーティスもローラと同じく、数多の氷を放たれてしまうが――。

「グッ!?」

雨あられと降り注ぐ攻撃を、水の魔法障壁でなんとか防いだノーティス。

そして銀髪を翻し、すぐに氷の魔法で反撃にでようとしたが……。

「……」


フッ。


マッデンに魔法構成を睨まれただけであっさりと、ノーティスが張った魔法の障壁もろとも、ノーティスの魔法全てを消滅させられてしまったっ!

「なにっ……ディスペルされたっ!?」

単一の魔法しか使えないのだ。

属性に絶対的に秀でた人間の支配。それが行き届いてしまう。

「第3階級の私の魔法が――。駆け引きも無しにこんなっ!? 馬鹿なっ!?」

魔法階級が上から3番目に属する彼女の魔法ですら、例外では無いという事。

マッデンの前では、水のマナを『扱う事』すらかなわない。

相手を魔法世界から駆逐する。これこそが本当の聖域の意義で、攻撃的な使い方である。


「くそっ!?」

瞬間ノーティスが大きく飛んで、マッデンから逃れようとするが……っ!

「ふむぅ……」

マッデンが笑いそして――。

ノーティスの目の前に氷の刃40、50……100っ!

増える氷の刃が、ノーティスを睨みつけている。

「はぁ……はぁ」

その場からは動けなくなってしまう彼女。


「ククッ……。さてさてぇ。楽しむか」

「くぅっ!?」

マッデンは、水の牢獄にレキを閉じ込めてしまった。

あっという間に傭兵の精鋭を圧倒し、レキを自分のもとに寄せるマッデン。

水を自由に、意図したとおり、見事に動かして見せる。


「水を……。この水の量を維持して操れるなんてっ!? しかも強度も高いっ! クッ。これが本物の神の右腕っ!? ゴディンなんて比じゃない力じゃないかっ」

水に呑まれながら、レキがうめく。

この世界では水と言わずどのようなマナでも、1回単発の使い切りだ。

マナを維持し、操り続ける行為。

それは圧倒的に高位な魔法練度と、何と言っても魔力容量が必要だった。

「ほぉ、やはり近くで見るとメンコイなぁ、ぶふっ。これ程小麦に焼かれても、しっかりと美しいキメと張りっ。下民よ~。良いぞっ! わしに捧げるには十分よっ! 褒めて遣わすっ!」

高らかに笑いを上げるマッデン。


「くっ、離せっ、この豚がっ!」

ばしゃっ! ばしゃしゃっ!

体幹の強いレキの、激しい抵抗を封じ込めれるだけの水の水量と強度。

これを維持し続けるマッデンは今、MPを秒単位で失っているハズ。

だが全くもって魔力に窮する気配がない。

「何を言う? 安心せよ女。我は人間の中にありて、最も神に近しき者っ! 水神様直々にお認めになった存在よ~。胸を張れっ! 我に愛される事は、神に愛されたと同義だっ! 誇り高い一族の、さらには頂点者の子を産めるのであるっ。歓喜せよ」

「かっ神に愛されたと同じだとっ!? 貴様はただの人に過ぎないっ! 高貴な我らの真の支配者。崇高なるマナの仕手。神よこの男に罰をっ!」

「歓喜……せよっ」

グギュウっ!

マッデンが笑うと、水が締まりをきつくする。

「ぐぁぁっ!?」

レキを取り巻く水圧が一気に跳ね上がり、ヨダレを垂らしてレキがうめく。


「ほれ。神をあがめよ。子が……我が神に等しき男の種が、欲しいじゃろ?」

「ヒッ!?」

マッデンが言葉をつむぐと水が――。

レキを取り巻く水が、彼女の装備を外していく。

「ここで一つ、楽しんでおこうかのぉ? たんと水に冒され、奇麗になると良い」

あっという間に水圧で鎧を外し、胸の部分をさらけ出させられたレキ。

薄紅色の突起があらわにされてしまう。

そしてそのまま腰元のズボンまでもが、水に剥がされていく。


「くっ、やめろっ!」

「ほぉ、胸が小ぶりか。まぁ仕方ない。これならノーティスのほうが良かったがのう。――そうじゃそうじゃ、あとで水でも入れて、膨らませるのも良いじゃろうて。うんうん、その小さいのも一応たっぷり遊んでから、好みに入れ替えるか。それでは……」

「クソがっ! 僕はお前の人形じゃないんだよっ!」

レキが唇をかむ。

だがマッデンには実際、そう言った着せ替え行為ができるのだろう。

マナに選ばれるとは、そう言う事だった。


「汚い言葉を使うなっ、メスが。娼婦みたいな言葉は断じてならんぞ小娘っ! ふぅ全く。じゃが……まぁ、威勢が良いのも初めだけじゃろうて。これを受ければ考えも変わるじゃろう。いっひっひっ」

ブタのような顔が歪み、水が数本ウネウネと指のような物を這いださせた。

「……」

何か、途方もなく嫌な予感に身震いするレキ。

「今から水で子宮の中までキレイにしてやるぞ。汚れも消えるし、薄汚い病気も消える。良い事じゃぁ。それにコレをすると、娘どもが静かになる。どんな貴族のじゃじゃ馬も、わしの命令には絶対服従じゃったわぃっ! 体の芯まで水に犯される感覚に、恍惚を覚える者さえおったんじゃあっ!」

「この豚が……っ!?」

レキのコメカミがヒクつく。

大勢の住民の前、レキは群れる水の触手に蹂躙されようとしている。

大勢に好機の目で見られ、そして考えたことも無い、人体実験のような人体洗浄法で辱められようとしているのだ。


「くぅううっ!?」

そして、パンツに水が入ろうとした時レキは――笑った。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】マギアアームド・ファンタジア

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
ハイファンタジーの広大な世界を、魔法装具『マギアアームド』で自由自在に駆け巡る、世界的アクションVRゲーム『マギアアームド・ファンタジア』。  高校に入学し、ゲーム解禁を許された織原徹矢は、中学時代からの友人の水城菜々花と共に、マギアアームド・ファンタジアの世界へと冒険する。  待ち受けるは圧倒的な自然、強大なエネミー、予期せぬハーレム、そして――この世界に花咲く、小さな奇跡。  王道を以て王道を征す、近未来風VRMMOファンタジー、ここに開幕!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...