VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第212話 マヨイは壊していない。

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⚫︎アイ

 私が他の連絡事項について尋ねると、マヨイは少しバツの悪そうな顔をして答えてくれた。

「まぁ、うん。まずアカトキが破壊した施設の修繕費用はタダになったよ。代わりに少し面倒くさいクエストを受けることになった」

「クエスト?」

「アインの領主を狙う暗殺者がいるらしい。ただ、その暗殺者を送り込んだ黒幕の狙いは暗殺者をアインの領主に殺させることなんだってさ」

「え、失敗するのが狙いなの?」

「……なるほど。その暗殺者が血縁関係あると色々と問題になりそうね」

 アインの領主を責める恰好の口実になりそうだ。
 まだ代替わりしたばかりで支持基盤は盤石とは言い難いということは掲示板でも少し話題になっていた。

「そうらしい。だからクエストの内容は暗殺を防ぐだけでなく、その暗殺者を保護してエイトまで送り届けることも含まれてる。ちなみにアインの領主には事情を伏せて欲しいみたい。たぶん、ウォルターはその暗殺者を手駒にしたいんじゃないかな?」

「うわぁ……腹黒じゃん。大丈夫?」

「その担保ってことで次期エイト領主であるシーリーってNPCがしばらく僕らと行動を共にすることになってるよ」

 ようするに人質ね。わざわざ次期領主を付けるってことは何か深い事情があるのかしら。 

「何か裏があるのかしら?」

「あー、ウォルターの静止を振り切って僕と決闘して負けたペナルティみたいものだから特別な事情があるわけじゃないよ」

「兄さん、領主館壊しちゃったの?」

「壊してないよ。お前と一緒にすんな」

 ということは魔力弾ではなく槍を使って戦ったのかしら。
 見たかったわね。

「何か手伝うことある?」

「今のところは大丈夫かな。ただ人手が必要になったら助けて欲しい」

「おふこーす」

「守るならタンクの私の出番じゃん! 任せて!」

「任せるも何も、そもそもアカトキが訓練場を壊したのが原因だぞ。こき使うに決まってんだろ」

「えぇ……」

「受けただけで修繕費はタダにしてくたし、完遂した時の報酬は目録を貰って来てるよ」

 そう言ってマヨイはアイテム欄から羊皮紙を取り出した。


・アルテラ大迷宮への特別入場許可証
・国外渡航許可証の発行
・地点指定型転移魔道具(メンバー分)
・アルテダイト鉱石10kg
・ミスリル鉱石100kg
・アダマンタイト鉱石100kg
・ワイバーン素材6頭分
・エイト領内変異種の素材各種


「想像以上ね……」要人警護の依頼とはいえ、相場よりかなり高い報酬なんじゃないかしら。キャラバンの護衛依頼を組合で見たことがあるけれど、アルテラからテコまでで500Rだったわよ?」

「シーリーが僕に決闘を吹っかけた慰謝料も込みだからね」

「お兄さん、このアルテダイト鉱石って何ですか?」

 確かにミスリルやアダマンタイトはファンタジー定番の鉱物だけど、私もアルテダイト鉱石というのは聞いたことがない。このゲームオリジナルの鉱石かしら。

「アルテラ大迷宮でしか採取できない鉱石だってさ」

「どんな鉱石なんですか?」

「ごめん、そこまで詳しくは聞いてないんだ」

「手に入れたら調べさせてくださいっ」

「もちろん!」

「お兄さん、ありがとうございます!!」

 マヨイは懐いてくるワンコに餌を与えてるような感覚でクレアに素材を渡している。そしてクレアからマヨイに向けられている感謝の言葉には、感謝だけでなく思慕の情も載せられている。これマヨイは気がついてるのかしら。

「兄さん、アルテラ大迷宮って前に言ってたやつ?」

「うん。ウォルターの許可があれば入れるらしいってのは聞いてたからダメ元で頼んだんだ」

「クリアできるの?」

「無理じゃない? どう見てもラスダンっぽいし」

 まだリリースから1ヶ月も経ってないのにラスダンに行けるようになるってどうなのかしら。

「マヨイ、国外渡航許可証って何?」

「あ、これ? これがないと国の外に出れないんだってさ。エイト領の西側にある湿地帯を超えた先にある森を超えると国境の壁があって、そこの検問を通るのに必要なんだって」

「初耳」

「兄さん、なら次のイベントが終わったら国外に行くの?」

「国外渡航許可証の下に書いてある魔道具があれば一瞬でエイト領まで戻ってこれるんだってさ。なら別に国外に出てもいいかなって」

 それは現在進行形でソプラの西に広がる湿地帯を攻略しているプレイヤーからすれば悪夢みたいな情報ね。

「隣の国ってどんな国なの?」

「ワービーストの国らしいよ」

「ケモミミ天国じゃん」

「ならイベント後はメンバー全員でソプラの西へ行きましょうか」

「そういえばマヨイたちは種族進化してるの?」

「してるよ。シキたちは人間のままだよね?」

「狼の獣人になりたかった。でも、選択肢になかった」

「私とショウもルイが進化しないならって進化は後回しにしてるよ」

「狼の獣人の進化条件なら私知って「教えて!」……狼系モンスターを100連続討伐と狼系変異種の討伐ね。なりきりセットを消費すると更に上位の種族に転生できるわ」

「やる。今すぐやる」

「なりきりセットってマヨイが着けてるやつか?」

「うん、付いてる技能が僕と相性良いから普段使いしてるんだ」

「効果、聞いていい?」

「もちろん。付いてる技能は狂狼化って言って──」

 それから暁が細かな進化ルートが載った本があることを暴露したことで更に種族進化についての話題で盛り上がった。よく考えたら暁の見つけた本には精霊については何も書いてないのよね。
 真宵の話では領主には研究者気質なところがあるみたいだと言っていたし、もし機会があれば聞いてみるのもいいかもしれないわね。

「そろそろ話を卵に戻しましょうか。」

───────────────
お読みいただきありがとうございます。
領主館壊していません。

話がほとんど進んでなくてごめんなさい……
これも全部余計なことを言い出したアホトキのせいなんです(責任転嫁
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