VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
上 下
224 / 228
本編

第211話 アカトキは天災。

しおりを挟む

⚫︎マヨイ

 藍香たちに連絡を取って5分もしない内に織姫がログインした。
 少し遅れてクレアも戻って来た。

「あ、織姫。今日はログイン出来ないって言ってなかった?」

「朱莉……じゃなかった。クレアが先輩が新しいテイムモンスターの里親を探してるからログインしようって誘ってくれたんです。それと新しいギルドメンバーさんも合流するって聞いたから挨拶したくて」

「なるほど」

 里親とは言い当て妙だ。まだ生まれてないから厳密には違う気がするけど、他にしっくりくる表現もないし説明する時はそう言おうかな。

「織姫ちゃん、ククルちゃんのこと凄い羨ましそうにしてたんですよ!」

呼んだにゃ?」

「あ、ククルちゃん!」

ママにゃ!」

 自分の名前が呼ばれたことに反応したのか、ククルが揺り籠から飛び出してクレアに抱きついた。

「クレア、私にも抱かせて」

「ククルちゃん、織姫ちゃんが抱っこしたいって」

いやーしゃー

「うう……せんぱいぃ……」

 ククルに拒否された織姫が涙目で「なんとかしてください」と訴え掛けてくる。どうやらククルが孵った時に居合わせたメンバーと、それ以外の人物では反応がかなり異なるらしい。

『あと5分もすればギルドホームに着くわ』

『了解。ありがとう』

 すでに藍香たちにも事情を説明してある。
 テイムモンスターを欲しがってた藍香は意外にも「他に引き取り手がいなければ引き受けるわ」と消極的で、逆に暁が「欲しい! 何でもするから譲って!」と興奮気味だ。
 ちなみにシキたちは「龍の卵を拾ったってどういうこと?」と混乱したらしいが今は落ち着いている。ルイは「小次郎がいるから」とハッキリと拒否した。

「ただいま」

「おかえり」

 これで迷い家のメンバーが全員揃った。
 ひとまず相談するのに適してそうな大部屋に移動する。

「君が織姫ちゃん? やっば、クール系美人じゃん! あ、オレはショウ。織姫ちゃんと同じ格闘家だよ」

「織姫です。よろしくお願いします」

「こちらこそ」

「私、ルイ。織姫も規格外?」

「え、規格外? 先輩のことですか?」

「そう」

「違いますよ。(でもいつか追いつきたいです)」

「おぉぉ……応援する」

「先輩ってマヨイのこと?」

「そうだよ。織姫は去年の夏に兄さんに告って手ひどく振られたの」

「「アカちゃん?/暁?」」

「ひぇっ……ちょ、お兄ちゃんも睨まないでよ!」

「「「「「アカトキが悪い」」」」」

 いくら友達でも触れて良いことと悪いことがある。
 僕も愉快な気持ちにはならないしね。

「アカトキ、あとで沙織さんに言い付けるから」

「やめて!? 死んじゃう!」

「アカちゃんの自業自得です」

「是非もないよね」

「こればかりはアカトキちゃんが悪いね」

 この時、僕はギルドメンバー暁以外の心が初めて一つにまとまったのを感じた。クレアの言う通り今回は暁の自業自得だ。




⚫︎アイ

 カタログに添付された見取り図には会議室と書かれている部屋にやって来た。それと、アホトキが口を滑らせたせいおかげで織姫とシキたちは簡単に打ち解けられたみたいね。これがワザとなのか、単なるポカなのか分かりにくいのよね。

「──それで原竜の卵を拾って来たんだよね。ククルの時と同じように素材を与えることで孵化するみたいなんだけど、拾ってきた内の3つは既に結構な量の素材が与えられてるみたいだ」

「それを孵化させるとククルみたいな竜が生まれてくるのか?」

「うーん、なんて言ったらいいかな。ククルの時は孵す時に大量のライオンの素材を使ったんだよね。だから与えた素材が孵化先に影響を与えるのは間違いない……はず」

 そう言って真宵は机の上に4つの卵を並べた。
 どれも白磁も見まごうばかりの白さだ。


名称:原竜の卵
分類:卵
説明:鋼龍種の卵。
   接触した魔力を魔素に分解して吸収し、その吸収量が閾値に達することで孵化する。自然孵化には数十年掛かるとも言われている。
備考:魔素吸収量0.33%


 備考欄の魔素吸収量の値こそ違うものの、どれも説明書きの内容は一緒だ。ちなみに魔力吸収量は多い順に0.33%・0.28%・0.17%・0.02%だ。0.02%と言うことは生まれたてなのかしら。

「これさ、兄さんと私で魔力を充填すれば生まれてくる子は兄さんと私の赤ちゃんってこと?」

「先輩、私と子どもを作ってください!」

「ちょ、織姫!?」

「お兄さんの赤ちゃん!? あわわわわっ」

 暁の天災的な発言によって場が混沌となりそうな気配を感じ取ったのか、真宵が手を打ち鳴らして注目を集めた。

「話が進まないから落ち着いてくれる?」

「う、うん」

「もちろん、魔力の充填には協力するけれど、先に生まれて来た原竜を誰がテイムするのか決めようと思う」

 言外に「次に余計な事を言えば分かってるよな?」とでも言いたげな視線で中学生組を見た真宵は、暁の話をスルーして話を進めた。
 これは、気まずくなって話を逸らしたわね。

「私、小次郎がいるからパス」

「私はテイムの技能を取る枠がないから難しい、かな」

「ルイみたいにモンスターと一緒に戦うのは憧れるけど……オレもシキと同じで技能枠がキツいな」

 シキたち3人はそれぞれの理由でテイムは無理だと判断したようね。3人とも無計画に技能を習得しているわけじゃないから、統合して枠を開けることは可能だと思う。でも技能の統合は大量の経験値が必要になるから、いきなりテイムを習得するために経験値を支払うのは難しいわよね。

「欲しい!」

「えっと、私も欲しいです」

 暁とクレアは私と同じで、前からククルのようなテイムモンスターを欲しがっていたから同然の反応よね。

「その、えっと、わ、私も……」

 織姫は顔を真っ赤にしながら小さな声でテイムモンスターを希望した。さっきの自分の発言を思い返しているみたいね。

「アイは?」

「自分の足で探したかったところだけど、これも何かの縁よね。私も真宵と赤ちゃんを作るわ」

「ちょ、アイ!」

「ふふっ、冗談よ、冗談」

「勘弁してよ……」

「さて、他にも話はあるのよね?」


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

暁が余計なことを言い出したので明日の更新を予定通りできるか不安です。でも思いついちゃったんだから仕方ないよね!
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...