VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
上 下
223 / 228
本編

第210話 アカトキは残念。

しおりを挟む

⚫︎アカトキ

「お前ら、迷い家だよな? うちのギルマスと会わなかったか?」

 そう声を掛けて来たのはケモ耳を付けたミケ猫ジェロニモスとちう大柄な男性だった。素質と位階は隠してあるけど、位階は71とシキさんたちよりも高い。所属ギルドの欄には今さっきまでお姉ちゃんが兄さん不在のストレスをぶつけていたサンドバッグたちと同じ朱桜會だ。

「決闘しているところに乱入して来たから身ぐるみ剥いでリスポーンさせたわよ」

「ちっ……間に合わなかったか。俺は朱桜會のサブマスをしてるミケ猫ジェロニモスだ。うちの馬鹿どもが迷惑掛けたみたいで本当にすまなかった。そんでよ、加害者側から頼むのは恥だって分かってはいるんだけどよ、あんたらに絡んだ奴らには厳しめの罰則を与えるから組合に報告すんのはなしにしてくれねぇか? もちろん、要求があれば何だって飲むつもりだ」

 そう言って彼は頭を下げた。
 言葉は荒いけど根は仲間想いの良い人なのかな?

「いいわよ、なんなら契約で縛りましょうか」

「そっちの5人もだぞ?」

「いいわよね?」

「「もちろん」」

「オッケー」

「大丈夫です!」

「アカトキは?」

「あぁ……うん、いいよ」

 そもそも彼が私たちを口止めしても意味がない。さっきの決闘のことは10人はいた野次馬の誰かから拡散するだろうし、もう掲示板にも書き込まれている。更に言ってしまえば、それを知った兄さんが追い撃ちとばかりに組合に告げ口チクリそうだ。

「契約技能は持ってるか?」

「クレアが使えたはずよね」

「はい! 任せてください!」

「それじゃ"この場にいる6人は先の決闘の内容をギルド外部に口外しない"こと、対価は1人5万Rでどうかしら?」

「……持ち合わせがたりねぇ。闘技大会前までには用意するってのはダメか?」

「構わないわよ」

 さすがに無体な要求はしないみたい。 
 ま、迷惑料としては妥当なんじゃないかな。
 クレアが契約書を作ったので手を置いてサイン(?)する。

「んじゃな。ありがとよ」

 契約を結ぶと、彼はそう言ってアインの方角へと駆け出した。
 ギルドチャット欄を開いていたようだし、リスポーンしたメンバーと合流しに行ったんじゃないかな。

「行ったわね。クレアはすぐ戻る?」

「はい! 今日中にシキさんたちの装備を作っちゃいます!」

「代金、どれくらい?」

「え、いりませんよ?」

「いいの?」

「はい! あ、リクエストってありますか?」

 シキさんは大剣装備中の移動速度低下を抑える装備、ショウさんは徒手空拳の状態でも使える盾、ルイは小次郎とお揃いの装備をお願いしていた。

「それじゃ、森を燃やしに行くわよ」

「お姉ちゃん、燃やすのが目的になってる! 目的は素材だからね!?」

「……そうだったわね」

 この後、めちゃくちゃ森を燃やしました。
 ボスを1度も見ることなくボス素材がいっぱいです。
 クレアは周回してからエイトに戻れば良かったとギルドチャットで嘆いてたけど、そこは残念先に立たずってやつだよね。

『皆んな、もうアインに向かってる?』

『まだよ。何かあった?』

 そして14周目が終わった頃、兄さんからギルドコールが届いた。その声色から何か後ろめたいことでもあるような印象を受ける。兄さん、まさかと思うけど領主館を壊しちゃった?




⚫︎マヨイ

 ウォルターからの依頼やギルドホームの修繕に関する話の詳細を詰めたり、僕の干渉力についてのウォルターの見解を聞いたり、ウォルターとタメ口で話す僕に我慢できなくなったシーリーと決闘したりしてから僕がギルドホームに帰ると、ちょうど入り口のところにクレアがいた。

「あ、おかえりなさい!」

「クレアはアイたちと一緒に行かなかったの?」

「途中の宿場町まで行って私だけ戻って来たんです!」

「なんかあった?」

「えっと、宿場町に着いてすぐ────」

 どうやら朱桜會のメンバー、その中でも僕が朱桜會と決闘しようとした時に訓練場に来なかったプレイヤーたちがアイたちに絡んだ結果、アイ1人で絡んで来たプレイヤーたちと決闘することになったそうだ。

「それでアイさんが金属素材をいっぱい手に入れてくれたんです! これでシキさんたちの装備が作れます!!」

「……決闘して金属素材を手に入れたの?」

「はい! こう、ボコボコってして! グシャグシャってするとアイテム欄に相手の装備を入れられるみたいなんです!」

 そう言いながらクレアはシャドーボクシングのような動作をした後、瓦割りのような動作をしてみせた。どうやらアイは徒手空拳で戦ったらしい。

「……決闘中に相手の装備を壊すと、それをアイテム欄に入れられるってことかな?」

「はい、そうですっ」

 それは仕様じゃなくてバグなんじゃないかな。
 そう思ってメニューから公式サイトにアクセスする。

「……うーん、書いてないな。仕様なのか、未発見のバグなのか分からないけど念のため運営にメッセージ送っておくか」

「え、バグなんですか?」

「たぶんね。他人のアイテムを盗むようなものだし、これがセーフなら初心者狩りとか流行っちゃいそうだし」

「え、じゃ、じゃぁ、これ使っちゃダメですか?」

「念のため控えて欲しいかな。金属が欲しいの?」

「……はい。シキさんたちの装備を作るのに金属素材が足りてなくて……」

「なら鋼龍と鋼王龍の素材があるから使いなよ。説明欄に天然の合金って書いてあるし、代用できるは……あ」

「どうしました?」

「いやー、実は鋼龍の巣で原竜の卵を4つ拾って来てたんだよね。完全に忘れてた……」

「えぇ!?」

「ククルの時みたいに素材を与えれば孵化するみたいだけど……」

「ど、どうするんですか?」

「今すぐ孵化するわけじゃないけど、他にも相談したいことがあるしアイたちをギルドホームに呼び戻そう」

 ウォルターからの依頼についてもギルド内で情報共有しておきたいし、何よりも早ければ今日にでも領主館から迷い家に派遣される人員のことを伝達し忘れてたら藍香どう反応するか……

「ならお兄さんはギルドコールで連絡を取ってください! 私はちょっとログアウトします!」

「え、ちょっクレア!?」

 そう言うなりクレアはログアウトした。
 ログインの制限時間が迫っていたのかな?
 とりあえずギルドコールで皆んなに連絡しよう。


────────────────
お読みいただきありがとうございます。
ミケ猫ジェロニモス、生存しましたね。

◯後悔先に立たず
×残念先に立たず
これは誤字ではなく暁の国語力のなさを露呈させている演出になります。本話タイトルの"残念"は暁の国語力のことです。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

処理中です...