上 下
194 / 228
本編

第181話 マヨイは早撃ちする。

しおりを挟む

⚫︎クレア

「お姉ちゃん……私だって手加減くらいできるよ?」

 お兄さんからギルドチャットで"新しいメンバーを勧誘したので織姫ちゃんの時と同じように試験をしたい"という旨の相談された後、模擬戦の相手から外されたアカちゃんがアイさんに文句を言い出しました。

「はぁ……自己回復のできる壁役であるアカトキと回復役の花奏カナデが模擬戦をすれば間違いなく泥沼化するわ。そうなれば前もって禁止していてもアカトキは例のオリジナル技能を使うわよね?ギルドホームの訓練場が壊れるのが容易に想像できるわ」

「つ、使わないって!」

 織姫ちゃんの話ではアカちゃんが作ったオリジナルの技能"ヒゲキ"は一撃でダンジョンを崩落させるほどの威力があるそうです。
 私が作ったオリジナルの技能とどっちが強いのかな?

「本当に?」

「本当だって!」

「模擬戦中に使という結論に至っても?」

「…………」

 アカちゃん、そこで黙っちゃったら認めてるようなものだよ。

「はぁ……もしカナデと模擬戦するなら街から離れてやりなさいよ」

「うぅ……分かった」

 こうしてアカちゃんはアイさんに説き伏せられたのでした。




⚫︎マヨイ

マヨイ鬼畜マヨイ外道マヨイ……」

「だから悪かったって……」

 カナデは僕の目算通り約1時間で200本のアンチカース・ポーションを飲みきったんだけど、その途中でを受けてしまったらしい。

「もう抹茶は飲みたくない」

「そう言われてポーションの味は僕が決めてるわけじゃないし……」

「いちごラテ、飲みたい」

「まだ飲むの!?」

「今度。今、ペナルティで味覚ないから」

 ペナルティを受けると徐々に味覚が鈍くなっていき最後は水を飲んでいるような感覚だったらしい。それでも呪いは無事に解除され元のステータスに戻った(というか少し上がっていたらしい)ので僕と2人でアルテラからエイトまでの最短距離を移動中だ。

「いちごラテか……アイが好きだし機会があれば色々と試してみようかな」

「ほんと!?」

「ちょ、近い!機会があればだって!それに何をどうすればポーションの味を変えられるのかすら分からないんだからね!?」

「期待、してる」

 そう言いながらアルテラとエイトの間を隔たる森(地図によればアルテラ大森林の一部らしい)を進んでいくと見覚えのあるパーティを視界に捉えた。
 片方は厄の討伐に際してPTを組んだシキたち3人.もう片方はゲーム開始2日目に僕と暁がレベリングしているところに絡んできたPTだ。

「なんなんですか!」

「だーかーらーさー、俺たちがレベリングに使うからどけっつってんの!」

「タゲとるの下手くそ過ぎて草生えるわ」

「あなたたちが邪魔するからでしょ!」

 どうやらこの辺りはレベリングに適した狩場らしい。
 そういえば草原狼王が出現するポイントだったかな?
 彼らも変異種を倒すことでレベルを上げているようだ。

「知り合い?」

「女の子たちの方はフレンドだよ」

「意外」

「何が?」

「……なんでもない」

 カナデは言外に「なんで気付かないの?」とでも言いたげな態度を取るけど僕に心当たりはない。
 さて、ここは手を出すべきか無視するべきか。

「あのさー、こっちは配信中なんだけどー?マジで萎えるからどいてくんない?」

「はぁ!?」

「そもそもさー、せっかくモンスターの群れをプレゼントしてあげたのに死んでないとか。そう言う逆転劇みたいなの誰も望んでないんだよねー」

 狩場を奪うためにMPKをしようとしたけど失敗したってことかな。それで更に絡んでると……これはどう見てもシキたちの方が被害者だろう。
 しかも相手の女性プレイヤーは配信者らしい。

「カナデ。介入するけどいい?」

「もちろん」

 カナデの了解を取った僕はシキたちのパーティに参加申請を送った。今のうちに録画も開始しておこう。何かトラブルがあった時のための証拠になるはずだ。

「こんにちは」

「こ、こんにちは」

「なんだテメェ?」

「彼女たちのフレンド兼助っ人だよ。君たちは?」

「わたしー、ミライって言うんですけどー、この人たちが私たちが狙ってる狼のネームドモンスターを横取りしようとしてるんですぅ。フレンドさんからも何か言ってあげてくださいよー」

「何言ってんのよっ!」

「……媚び方が気持ち悪い」

 僕らに先ほどの会話を聞かれてないと思っているのか、ミライという配信者はシキたちを悪者扱いし始めた。
 しかし、タイミングが良いのか悪いのか。ショウとルイがミライの言葉に反応したタイミングでミライたちの背後に草原狼王が出現POPした。

「タウン「魔力弾」トスタンス!」

 ミライたちのパーティにいる剣士風の男が草原狼王のターゲットを奪おうとスキルを使うよりも早く、僕の魔力弾が草原狼王の眉間を撃ち抜いた。


[Grass King wolfを1匹倒した]
[素材:草原狼王の魔石を獲得した]
[素材:草原狼王の大牙を2個獲得した]
[素材:草原狼王の毛皮を獲得した]
[素材:草原狼王の尻尾を獲得した]
[装備:草原狼王なりきりセットを獲得した]


 もう見慣れてしまった変異種を撃破した時のリザルトが目の前に表示された。尻尾は初めてみたかもしれない。シキたちには悪いけど、このままドロップ品は貰ってしまおう。それにシキ・ショウ・ルイ、そしていつの間にかシキのパーティに合流していたカナデの4人にもそれなりのドロップがあったはずだから何か文句を言われることはないはずだ。

「な、な、な……」

「さすが」

「はやすぎ」

「早すぎて草生えるわー」

「え、え?」

 こうして驚かれるのは久しぶりのような気がする。
 トラブルの原因になっていた草原狼王も倒したし、ついでにシキたちも迷い家のギルドホームに案内しようかな。そう考えていると僕の予想の遥な斜め上の言葉を発したプレイヤーが現れた。

を倒してくれてありがとー、早くドロップ出してよ。ほら、ファンの皆んな視聴者たちも見せろってー」


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
メスガキ姫プ系配信者ミライの再登場です。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』 倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。 ……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。 しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。 意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載

サモナーって不遇職らしいね

7576
SF
世はフルダイブ時代。 人類は労働から解放され日々仮想世界で遊び暮らす理想郷、そんな時代を生きる男は今日も今日とて遊んで暮らす。 男が選んだゲームは『グラディウスマギカ』 ワールドシミュレータとも呼ばれるほど高性能なAIと広大な剣と魔法のファンタジー世界で、より強くなれる装備を求めて冒険するMMORPGゲームだ。 そんな世界で厨二感マシマシの堕天使ネクアムとなって男はのんびりサモナー生活だ。

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...