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本編
第176話 マヨイは疲労する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
僕の視界を埋め尽くす七色の光の正体はすぐに察することができた。赤は火属性、青は水属性、緑は風属性といった感じで属性が付与された魔力弾だ。扉の閉まる音で聞き取りづらくはあったけど"属性付与"と言っているのは聞こえたし間違いないだろう。
「(形状変化・魔力弾×3000)」
魔力弾を使用する場合、まずは発射点Aから通過点Bを設定する必要がある。そして通過点Bの地点での威力が最も高い。おそらく僕のいる座標を通過点Bに設定したであろう相手の魔力弾を僕の魔力弾で最大威力になる手前で相殺する。ぶつかり合つ魔力弾が大きな音を立てて鼓膜を震わせた。
「(相手は僕のコピーらしいから持ってる技能は同じはず。なら次に相手が狙うのは──)」
僕が最も多様する技能は間違いなく魔力弾だ。
しかし、この場で最も有効な攻撃はそれじゃない。
僕は音もなく左から襲い来る短剣を冷静に杖で捌く。
「それは読んでたよ」
「魔力弾×1000」
攻撃の主、僕のコピーは短剣が捌かれると即座に空中へと退避して僕が牽制として放った魔力弾を魔力弾を放って相殺した。回避出来るタイミングのはずだけど、どうやらコピーは回避よりも相殺を優先するらしい。
宙に浮いたまま僕を睥睨する僕のコピー。こうして見ると何もかもが似過ぎていて妙な気分になるね。
「「……………………………………」」
ここまでの一連の攻防で分かったことはコピーは普段の僕と同じように魔力弾による飽和攻撃を核とした戦い方をしてくるということ。そして僕の魔力弾による攻撃に対して回避よりも相殺を優先すること。つまりコピーが放った魔力弾を相殺し続ければ現時点でコピーよりも魔力の残量の多い僕が負けることはないということだ。
「(飛行)」
「魔力弾×400000」
そして僕が飛行技能を発動した直後、コピーから視界どころか空間を埋め尽くすような量の魔力弾が僕に向かって放たれた。しかし、はっきり言ってそれは悪手だ。ただでさえ僕よりも少なくなっている魔力を更に使ってしまっているし、その全てが僕に向かっている時点で回避して下さいと言っているようなものだ。
「──ッ」
もちろん僕が回避したそこにコピーが短剣で襲い掛かってくるのも想定内だ。先ほど襲い掛かって来た時と寸分違わぬコピーの短剣を僕は手に持った杖で叩き落とす。
ここで僕は攻勢に出ることにした。
「(魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(攻撃威力調整-10%・魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(攻撃威力調整-20%・魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(攻撃威力調整-30%・魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(攻撃威力調整-40%・魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(攻撃威力調整-50%・魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
「(攻撃威力調整-99%・魔力弾×6000)」
「魔力弾×6000」
落とされた短剣には見向きもせず僕から距離を取ろうとしたコピーに向かって魔力弾の弾幕を立て続けに放つ。コピーも僕の放った魔力弾に対して同じ数放って相殺しようとするが、攻撃威力調整を使って威力を下げてもコピーの放つ魔力弾の数は変わらない。
「(魔力弾×600000)」
「………ッッ」
そして本命の一撃。コピーは魔力不足から同じ数の魔力弾を放つことが出来ず放たれた魔力弾の7割以上をその身で受けることとなった。
僕のステータスは知力と精神力が他のステータスと比べて頭ひとつ抜けて高い。それもあって魔力の最大値も高いのだけど、これだけ短時間に大量の魔力弾を撃ち合えばそれも枯渇してしまう。
「はぁっ!!」
そして大量の魔力弾をその身で受けても2割近い体力を残すコピーに僕から接近戦を仕掛けた。僕も今の攻防で魔力の大半を使い切っている。魔力を回復されても面倒だから早めに倒し切ってしまいたいね。
「はぁっ」
僕のコピーだというのなら対応して欲しいのだけど、コピーはフェイントを混ぜた僕の攻撃に対応出来ていない。それに接近戦を仕掛けてからというもの、コピーの動きは何処かぎこちない。
「(逃げんな)」
「……ッッ」
僕が接近戦を仕掛けながら魔力弾で追撃を掛けると、コピーは僕の攻撃をその身に受けながら距離を置こうとした。しかし、僕とコピーのスペックが同じである以上は簡単に距離を取ることなんてできない。
「魔力弾×50000」
そしてコピーが僕からの追撃を耐えながら回復した魔力で魔力弾を放つ。しかし、僕は回避をすることも、相殺するための魔力弾を放つこともない。ただ正面からそれを受けてコピーに突っ込んで杖を頭に叩きつける。
コピーに対して60万発で目算7割強の体力しか削れなかったのだから、たかたが5万発程度を受けても死にはしないのだ。
「へぇ……人形だったんだ?」
体力の尽きたコピーの身体が床へ落ちていくのを反射的に掴むと、そこにあったのは僕のアバターと瓜二つの姿をしたコピーではなく手のひらサイズのデッサン人形だった。
[Idea dollを倒した]
[称号:克己を獲得しました]
[従者:Idea dollを獲得しました]
[ワールドアナウンス:従者を獲得したプレイヤーが現れました。以後、メニュー項目に従者が追加されます]
「………………」
ここに来てワールドアナウンスが流れるとは思いもしなかった。精神的な疲労感を覚えた僕は手に入れた"Idea doll"に関する情報を一通り確認してからログアウトすることにした。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
※特に苦戦することなく自分のコピーを倒したマヨイですがマヨイ視点では簡単に見えるだけです。
誰の閑話を読んでみたいかのアンケートですが、思ってた以上に投票数が少なかったので明日の締め切りまでに票が合計10票に満たなかった場合は投票されたものの中からダイスロールして決めます。
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